セッション情報 ワークショップ1「上部消化器及び小腸出血における最近の動向」

タイトル

当院における小腸出血症例の現状と最近の動向

演者 婦木 秀一(社会保険神戸中央病院 消化器科)
共同演者 松田 英士(社会保険神戸中央病院 消化器科), 安田 光徳(社会保険神戸中央病院 消化器科DELIMITER京都府立医科大学 消化器内科)
抄録 今回、我々は、当院における小腸出血症例の現状と最近の動向について検討した。対象は2009年10月から2011年5月までに、当院にて、小腸カプセル内視鏡検査を施行した延べ42症例である。方法としては、上部消化管及び小腸出血症例の精査は、EndoCapsule(Olympus)を用いて施行した。年齢は、25歳から87歳で、男性24例、女性18例であった。検査理由は、OGIBが35例、遺伝性毛細血管拡張症の精査目的が1例、イレウス精査が2例、FOBT陰性の貧血精査が1例、GAVE精査が1例、肝脾肉芽腫性疾患精査が1例、単純性潰瘍疑いが1例であった。結果であるが、全小腸を観察できたのは42例中33例(78.6%)であった。OGIBのうち出血源と貧血の原因が特定できたのは、35例中21例であった。その21例中、小腸びらん・潰瘍・小出血点を15例に認め、出血源と考えられた(そのうち、12例:80%は、抗血小板薬またはNSAIDsによる薬剤性粘膜障害が原因と考えられた)、その他、寄生虫が1例、胃のびらん・びらん性出血・胃潰瘍が3例、小腸angiodysplasiaが1例であった。なお、カプセルの滞留については、小柄な女性で、食道第二生理狭窄部に滞留し、内視鏡下に十二指腸に進めた症例が1例と、NSAIDs潰瘍症例において、小腸輪状潰瘍・膜様狭窄で滞留し、バルーン拡張後DBEにて回収した例が1例あった。考察および結論であるが、当院では、高齢化や循環器疾患、整形外科的疾患等の基礎疾患・併存疾患の増加に伴い、薬剤性による小腸粘膜障害による出血が多く見られた。従って、有効な小腸粘膜保護剤の投与が、必要と考えられる。現在、各種粘膜保護剤にて加療中であり、治療効果について、検討中である。さらに、文献的考察を加えて、今回報告する。
索引用語 小腸出血, 薬剤性粘膜障害