抄録 |
【目的】当院での膵頭部癌に対する病理診断は、まずはERCPによる胆管生検や胆汁細胞診をおこない、これにより診断できない場合は、膵管ブラシ細胞診や膵液細胞診またはEUS-FNAをおこなうようにしている。今回われわれは、膵頭部癌の病理診断法についてretrospectiveに検討してみた。【方法】対象は2006年から2011年までに当院にて経験した膵頭部癌のうちERCPまたはEUS-FNAにより病理学的診断を試みた181例(平均年齢:68.7±9.9歳、男女比97:84)である。これら対象症例を画像検査にて胆管狭窄を認める145例と胆管狭窄を認めない36例に分け、それぞれの病理診断法について検討した。【成績】胆管狭窄を認める膵頭部癌145例全例に対しERCPが施行されていた。ERCP時の胆管生検と胆汁細胞診の正診率はそれぞれ45%(55/122例)と68%(81/119例)であり、これらふたつの検体採取法を組み合わせることにより69%の正診率が得られた。胆管からの検体採取法により診断ができなかった症例に対しては膵管ブラシ細胞診や膵液細胞診を追加することで正診率は81%に上昇していた。胆管狭窄を認めない膵頭部癌36例のうち20例でERCPを施行されており、このうち胆管生検や胆汁細胞診といった胆管からの検体採取法により診断できた症例はなく、膵管ブラシ細胞診や膵液細胞診といった膵管からの検体採取法を用いても正診率は35%と低率であった。一方、ERCPにより診断できなかった43例のうち7例でEUS-FNAが施行され6例(86%)で病理診断が得られていた。さらに、EUS-FNAを施行したすべての膵頭部癌23例を対象にした場合、その正診率は96%と非常に良好であった。【結論】胆管狭窄を認める膵頭部癌では胆道ドレナージも同時におこなえるERCPにより比較的高率に病理診断が可能であったが、胆管狭窄のない膵頭部癌に対するERCPの正診率は満足されるものではなかった。一方、EUS-FNAの診断能はこれまで報告されているとおり当院でも非常に高いものであった。以上より、膵頭部癌では胆管狭窄の有無によりERCPとEUS-FNAを使い分けることが重要であると考えられた。 |