セッション情報 シンポジウム1「進行肝細胞癌に対する治療戦略」

タイトル

下大静脈腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌の対する放射線治療

演者 尾下 正秀(大阪警察病院 内科)
共同演者 宮竹 英希(大阪警察病院 内科), 岡本 欣晃(大阪警察病院 放射線治療科)
抄録 【目的】現在、放射線治療は肝細胞癌の主たる治療法ではないが、肝細胞癌の主病巣、リンパ節・骨・脳などの転移巣、門脈など血管内腫瘍栓に対して行われている。今回、下大静脈腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌に対する放射線治療を経験したので報告する。
【対象】2009年より下大静脈腫瘍栓に対して放射線治療を施行した肝細胞癌患者5名(男/女=4/1、年齢51~85歳、成因:HBV/HCV/アルコール=1/2/2、Child分類では全例A)。
【成績】症例1 65才男性、2009年2月放射線治療(60Gy)施行。以後、リザーバー動注、sorafenib投与、RFA施行。肝細胞癌の増大はなく経過するも、肝膿瘍よりの感染症にて放射線治療後23ヶ月後に死亡。 症例2 85才男性、2009年5月放射線治療(45Gy)施行。下大静脈腫瘍栓の増大なく、肝の主腫瘍の緩徐な増大は認めるも、高齢のために以後無治療で経過観察中(放射線治療後24ヶ月生存中)。 症例3 74才男性、2009年12月放射線治療(40Gy)施行。下大静脈腫瘍栓の増大なく、sorafenib内服中。肝の主腫瘍の増大あり(放射線治療後17ヶ月生存中)。 症例4 78才女性、2010年6月放射線治療(45Gy)施行。主腫瘍の増大にて肝不全進行。放射線治療後4ヶ月後に死亡。 症例5 51才男性、2010年12月放射線治療(52.5Gy)施行。下大静脈腫瘍栓の増大なく、放射線治療時に肝細胞癌の横隔膜浸潤も認め、放射線治療後sorafenib内服開始し、現在内服継続中(放射線治療後6ヶ月生存中)。
【まとめ】下大静脈腫瘍栓に対する放射線治療は、その病変を十分に制御しうると思われた。症例数は少なく、今後、さらに症例を積み重ねて検討していく必要はあるが、下大静脈腫瘍栓の増大をおさえることで、sorafenibなど進行肝細胞癌に対する他の治療法へと橋渡しも可能になり、生命予後の改善を期待しうると考えた。
索引用語 肝細胞癌, 放射線治療