セッション情報 |
パネルディスカッション17(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)
進行肝細胞癌治療におけるcontroversy (手術・Sorafenib・動注・粒子線治療、いずれが主役となるべきか?)
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タイトル |
消PD17-1:肉眼的門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対する切除を中心とした集学的治療 -Long-term survivorをめざして-
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演者 |
井上 陽介(東京大・肝胆膵外科) |
共同演者 |
長谷川 潔(東京大・肝胆膵外科), 國土 典宏(東京大・肝胆膵外科) |
抄録 |
【背景・目的】門脈侵襲(PVTT)は肝細胞癌(HCC)における予後不良因子である。BCLCガイドラインでは、PVTT-HCCに対してSorafenibによる姑息的治療が推奨されているが、切除により比較的良好な切除成績が得られる報告も数多く見られ、長期生存を見込める唯一の手段であると考える。当科におけるPVTT-HCCの治療戦略、手術術式、治療成績について報告する。【対象・方法】1995-2008年、当科で切除された肉眼的PVTT-HCC 74例を対象とした。原則全例に術前TACEを施行。切除範囲は通常の肝切除基準に準じて決定し、Enbloc切除を第一とするが、Vp4やEnbloc切除では許容肝切除量を超過する場合、TTをその先端より手前で露出摘除する手法(Peeling off(PO)法)を用い、脈管をより末梢で処理し、多くの肝実質を温存する。VP4に対する姑息的切除など、あきらかに残肝に遺残が見られる肉眼的非治癒切除例では、術後肝機能が回復した段階で残肝TACEを追加する。さらにSorafenibによる補助(維持)療法の臨床試験を進行中であり、参加の同意が得られたPVTT症例には、最低1年間のSorafenib投与を追加している。【結果】VP4/3/2/1を13/26/25/10例に認めた。術関連死はなく、在院日数中央値は19日(11-271日)。治癒切除例の累積3、5、10年生存率は38%、30%、21.6%。無再発3、5、10年生存率は22、12%、10%。Enbloc法、PO法で長期成績に差はなかった。肉眼的治癒切除62例中53例に再発を認め、肝内再発が大部分を占め(43例,81%)、TACE(28例)や再切除(17例)を中心とした初回再発治療を行った。74例中14例が5年生存を得ており、うち5例で無再発である。【結論】腫瘍条件・肝機能から切除可能な症例に関しては、安全かつ根治的な肝切除と残肝機能の温存を追及し、適切な追加治療・再発治療を加える集学的治療により、比較的良好な生存率と、長期生存例も得られている。更なる予後向上のために、Sorafenib等による再発抑制、初回切除不能例のdown stagingが今後の課題である。 |
索引用語 |
腫瘍栓, 肝切除 |