セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル

潰瘍性大腸炎に合併し、急速な転帰をたどったS状結腸未分化癌の1例

演者 松浦 敬憲(赤穂市民病院 消化器科)
共同演者 勝谷 誠(赤穂市民病院 消化器科), 横山 正(赤穂市民病院 消化器科), 田渕 幹康(赤穂市民病院 消化器科), 三井 康裕(赤穂市民病院 消化器科), 高尾 雄二郎(赤穂市民病院 消化器科), 小野 成樹(赤穂市民病院 消化器科)
抄録 症例は30歳、男性。23歳時に左側結腸型の潰瘍性大腸炎(UC)を発症。完全寛解することはなかったものの、発症時以降は入院加療を要さず、メサラジンの内服と増悪時のステロイド注腸で病勢をコントロールしていた。2010年9月の大腸内視鏡検査では、下行結腸・S状結腸・直腸に活動期UCの所見が見られたものの、腫瘍性病変は認めず、S状結腸のびらんより採取した生検組織からも悪性所見、異形成を認めなかった。
2011年1月下旬より下腹部痛があり、2月1日腹痛増悪のため緊急入院となった。同日の腹部単純CTで下腹部の腫瘤性陰影と肝内に多発するLDAを認めた。大腸内視鏡検査では、S状結腸に隆起性腫瘍とS状結腸・直腸に多発する潰瘍性病変を認め、生検でいずれも未分化癌と診断された。腫瘍は結腸・直腸の広範囲に転移しており、さらに多発肝転移を来していると考えられた。
切除不能大腸癌の診断で、mFOLFOX6による全身化学療法を開始し、2クール目(2月23日~)ではさらにbevacizumabを併用したが、3月初旬に撮影したCTでは新たに肺転移を認め、効果判定はPDであった。Kras遺伝子変異がないことを確認し、3月9日よりpanitumumab +FOLFILI2を開始したが、3月13日に穿孔性腹膜炎を発症、緊急Hartmann手術を施行した。開腹時の所見として、S状結腸の原発部の穿孔と腹膜播種を認めた。3月28日にpanitumumab単剤で投与するも効果なく、4月6日永眠された。
潰瘍性大腸炎においてcolitic cancerは常に注意すべき合併症の1つである。今回われわれは、UC発症後7年でcolitic cancerを発症し、極めて短期間に発育増大し化学療法にも抵抗性を示し、早期に死亡に至った若年症例を経験したため、若干の文献的考察とともに報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎, colitic cancer