セッション情報 シンポジウム2(消化器病学会・肝臓学会合同)

C型肝炎治療の最前線

タイトル 肝S2-6追:

C型慢性肝炎治療におけるIFN-α中和抗体の影響

演者 榎本 平之(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科))
共同演者 久家 千紗(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)), 西口 修平(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科))
抄録 【目的】C型慢性肝炎に対してPEG-IFN-α・リバビリン(RBV)とプロテアーゼ阻害剤 (PI)の3剤併用が標準治療となりつつあるが、前治療無効例の成績は不良である。我々は、PEG-IFN-α/RBV投与患者におけるIFN-α中和抗体発現と治療無効との関連を解析し、さらに著効率改善が期待される3剤併用療法に対するIFN-α中和抗体の影響について検討した。
【方法】研究1:Peg-IFN-α/RBV治療を行った129例および臨床的に抗体の発現が疑われた別集団の83例の血清中のIFN-α中和抗体をバイオアッセイ法で測定した。研究2:第二世代PIの臨床治験52例のうち、投与終了時の効果判定可能な15例を解析した。
【成績】研究1:129例中ETR(end of treatment response)の 82例は全例抗体陰性であったが、non-ETR 47例中の7例(15%)で抗体陽性であった。また、臨床的に抗体の存在を疑った83例中12例(14%)で抗体陽性であった。抗体陽性者にはgenotype 2/3やIL28B TT型などのIFN感受性の高い患者も含まれていたが、抗体陽性19例は全例無効であった。IFN-α中和抗体はIFN-βのHCVレプリコン複製抑制作用を阻害しなかった。さらにPEG-IFN-α/RBVが無効であった5例の抗体陽性者にIFN-β/RBVを投与し、3例でSVRを得た。研究2:第二世代PI3剤併用で投与終了時の効果判定可能な15例中、初回治療6例および前回再燃1例は全例ETR(SVR3例、他判定待ち)であった。前回無効8例中、ETRは5例(SVR2例)であり、SVR達成率は25%であった。non-ETR3例中core70は変異型が2例、野生型が1例であり、全例でPI耐性株が出現した。IFN-α中和抗体は野生型の1例のみで陽性であり、本例は投与3週で一時的にウイルスが陰性化したが、投与8週で再燃した。
【結論】PEG-IFN-α/RBV治療無効例の約15%にIFN-α中和抗体が存在し、これらの症例では第二世代PIを併用しても無効となる可能性が高い。前治療無効例の場合はIFN-α中和抗体を測定し、抗体陰性者では3剤併用も選択枝の一つであるが、抗体陽性者はIFN-β/RBVまたはDirect antiviral agentの2剤併用を選択することが望ましい。
索引用語 IFN-α中和抗体, プロテアーゼ阻害剤