抄録 |
【目的】当科では2003年より進行肝細胞癌に対して積極的にIFN併用肝動注化学療法を施行してきた.今回これら進行肝細胞癌に対するIFN併用肝動注化学療法について検討した.【対象】対象は2003年から2011年まで当科にて治療を行った進行肝細胞癌症例.治療法は5-FU 300mg/m2/dayを5日間持続動注し(day1-5, day8-12), IFNα-2b 3MIU/body週3回筋注またはPEG-IFNα-2b 1.0μg/kg週1回皮下注を4週間継続した. CDDP併用は20mg/m2/dayをday1,8に1.5時間,またはDDP-H18.8mg/m2/dayを10分間肝動注した.奏効率,全生存期間,無増悪生存期間,副作用,奏効予後因子を検討した.【結果】 対象期間に肝動注を施行した症例は257例.症例背景は年齢65歳,男性79%,HCV陽性54%,PS079%,Child-Pugh分類はA53%,B36%,C11%, 初発28%であった.平均腫瘍径は5.6cm, 腫瘍個数5個以上78%, 主要脈管侵襲陽性35%, 遠隔転移陽性23%,Stage(II/III/IVA/IVB)は, 18%/33%/32%/18%であった.全体の治療効果(CR/PR/SD/PD/NE)は, 6%/23%/29%/37%/5%で,奏効率(CR+PR)は29%であった.腫瘍コントロール率(tumor control rate, CR+PR+SD)は58%であった.CDDP併用の奏効率は32%と併用なしの22%に比較して高い傾向があったが有意差はなかった(p=0.12). 全生存期間(OS)は, MSTが10.7ヶ月, 無増悪生存期間は3.5ヶ月であった.奏効因子として,主腫瘍径5cmより小とAlb3.5g/dl以上が挙げられた.予後因子として,PS1以下,主要脈管侵襲陰性,遠隔転移なし,Alb3.5g/dl以上,AFP400ng/ml以下が挙げられた.奏効例のOSは,32.5ヶ月と非奏効の7.0ヶ月に比較し有意に延長していた(p<0.0001). grade3/4の副作用は全体の64%でみられ,血液毒性が51%に認めたが対処可能であった.【結語】進行肝細胞癌に対するIFN併用肝動注化学療法は,奏効が期待でき,奏効例で生存期間は有意に延長したことより,進行肝細胞癌に対する内科的治療戦略に重要な役割を担う.また奏効因子と予後因子を考慮してその適応を考慮する必要がある. |