セッション情報 パネルディスカッション17(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

進行肝細胞癌治療におけるcontroversy (手術・Sorafenib・動注・粒子線治療、いずれが主役となるべきか?)

タイトル 肝PD17-10:

進行肝細胞癌治療における陽子線治療の役割

演者 福田 邦明(筑波大・消化器内科)
共同演者 安部井 誠人(筑波大・消化器内科), 櫻井 英幸(筑波大・放射線腫瘍科)
抄録 【緒言】進行肝細胞癌治療においてまず検討するのは肝切除であるが,肝予備能や多発転移などにより切除出来ない症例を多く経験する。切除困難な進行肝細胞癌に対し,当院では陽子線治療(PBT)を試みるケースも多い。再発も含めたVp3/4肝細胞癌35症例に対するPBTの局所制御率および生存期間中央値は,それぞれ91%,22ヶ月と良好な成績であり(Sugahara S et. al, Strahlenther Onkol.185(12);782-8,2009),進行肝細胞癌治療におけるPBTの貢献が期待される。【目的】進行肝細胞癌の治療戦略におけるPBTの役割を明らかにするために,進行例および門脈腫瘍栓症例におけるPBTの治療成績を検討する。【方法】2008年7月までに当施設でPBTを施行した初発肝細胞癌患者156例を対象とし,累積生存率をKaplan-Meier法を用いて解析した。【成績】性別: 男111例/女45例,年齢: 65.7歳(43-90),腫瘍径: 41.4mm(10-135),腫瘍個数: 1.4個(1-11),stage: I 18例/II 101例/III 33例/IVA 4例,PVTT:Vp2 3例/Vp3 4例/ Vp4 5例.stage別の3年/5年生存率はそれぞれ,stage I 49.8%/37.4%,stage II 75.1%/49.1%,stage III 74.7%/55.4%,stage IVA 37.5%/37.5%と有意差を認めず,stage I+IIとIII+IVAで比較しても5年生存率47.6% vs 54.3%と有意差は認めなかった。Vp2以上12例の1年/3年/5年生存率は,70.1%/50.9%/50.9%と,Vp1以下の94%/72.6%/48.7%と比べ有意差を認めなかった。【考察】PBTは局所治療であるため,sorafenibとは異なり進行肝細胞癌治療における役割は限局される。一方で,5cmを超える大きな腫瘍や血管浸潤・腫瘍栓を有する進行した肝癌に対してもPBTは比較的良好な成績を示したが,それには高い局所制御率と安全性が寄与していると考えられる。特に門脈腫瘍栓例においては,腫瘍栓が消失し門脈が再開通する症例も経験した。また,PBT単独では治療困難な両葉多発肝癌や遠隔転移を有する肝癌に対しても,他の治療法と併用し集学的に治療することで更なる治療成績の向上が期待出来る。【結語】PBTは進行肝細胞癌治療の進歩に貢献出来る治療法である。
索引用語 肝細胞癌, 陽子線治療