セッション情報 パネルディスカッション17(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

進行肝細胞癌治療におけるcontroversy (手術・Sorafenib・動注・粒子線治療、いずれが主役となるべきか?)

タイトル 肝PD17-11:

門脈腫瘍栓Vp3-4を伴った肝細胞癌に対する粒子線治療

演者 寺嶋 千貴(兵庫県立粒子線医療センター・放射線科)
共同演者 村上 昌雄(兵庫県立粒子線医療センター・放射線科)
抄録 【目的】門脈腫瘍栓を伴った肝細胞癌に対する治療法として切除、動注化学療法、放射線療法、Sorafenibなどの化学療法が選択肢となるが、現時点ではどの治療法が良いのか判然としない。我々は様々なstageの肝細胞癌に対して粒子線治療(陽子線・炭素イオン線)を行ってきたが、今回はVp3-4の門脈腫瘍栓を伴った肝細胞癌に対する治療成績をretrospectiveに解析して報告する。
【方法】2001年4月から2010年12月までに兵庫県立粒子線医療センターで粒子線治療を施行された63例。男:女=50:13、年齢: 35歳~82歳(中央値64歳)、B型肝炎:C型:非B非C=16:28:19、PS 0:1:2=45:13:5、Child-Pugh A:B:C=35:28:0、肝障害度 A:B:C=14:37:12、ICG R15: 6-68%(中央値26.5%)、門脈腫瘍栓Vp3:Vp4=29:34、同時性肝内転移(IM) 有:無=42:21、腫瘍最大径: 3-14cm(中央値6.5cm)。陽子線:炭素イオン線=49:14、照射プロトコール: 56-80GyE/10-38fr、照射範囲の設定は主腫瘍本体および腫瘍栓全体とした。有害事象の評価にはCTCAE Ver. 3を用いた。
【成績】全体の全生存率は1年48%、2年22%、3年13%であった。Vp3かつIM(-)の1年生存率は75%、2年48%、3年32%であった。Vp3 かつIM(+)はそれぞれ80%、40%、20%であった。Vp4かつIM(-)は1年生存率38%、2年0%、Vp4かつIM(+)は1年生存率 28%、2年0%であった。予後因子として単変量解析ではVp3-4、肝内転移有無、腫瘍最大径、PIVKAII、肝障害度、PSが有意であったが、多変 量解析では肝内転移有無のみが有意となった。Grade 3以上の有害事象は粒子線治療の関与が明らかな肝障害を3例、放射線性皮膚炎を1例に認めた。
【結論】門脈腫瘍栓Vp3-4があっても同時性IMがなければ粒子線治療の治療成績は良好であった。反面、IMを有する症例については粒子線治療だけでは不十 分であったが、IMに対する適切な追加治療を行えばさらに予後の改善が期待できると考えた。我々はVp3-4でIMを有する症例に対して、粒子線治療に動注化学療法を同時併用した後に維持動注療法を続け、可能であれば肝動脈化学塞栓療法を行い、予後の改善に取り組んでいる。
索引用語 粒子線治療, 肝細胞癌