セッション情報 パネルディスカッション17(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

進行肝細胞癌治療におけるcontroversy (手術・Sorafenib・動注・粒子線治療、いずれが主役となるべきか?)

タイトル 肝PD17-12:

Vp3,4進行肝細胞癌治療における治療戦略

演者 安井 豊(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 土谷 薫(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】
進行肝癌に対する治療法はSorafenibの登場により大きく変貌を遂げたが、高度門脈侵襲(Vp3,4)を有する症例においては未だ十分な治療効果は得られず、治療戦略は定まっていない。今回我々は高度門脈侵襲を有する進行肝癌に対する治療戦略の構築を目的とし、治療継続・変更の適切な時期について検討した。
【方法】
2009年から2012年3月まで当院でSorafenibを導入した進行肝癌92例のうちVp3,4を有する20例および、同時期に治療されたVp3,4を有する進行肝癌で緩和治療以外の治療を受けた23例(動注 8例、放射線治療 15例)についてretrospectiveに解析した。肝予備能、画像効果判定について全経過と予後とを比較検討した。
【結果】
Sorafenib導入例92例の検討:予後不良に関与する独立因子として、治療開始前門脈浸潤(リスク比、Vp3,4=3.2, p=0.003)、4週後画像効果判定(PD=4.2, p=0.007)が有意であった。Vp3症例でCRが1例存在した。
Vp3,4 を有する43例の検討:平均年齢 70歳、男性/女性 9/34 、Child A/ B/ C 28/ 13/ 2 であり、生存期間中央値107日であった。sorafenib群と動注群の比較では予後に有意差は認めなかった。Vp3,4全体で予後不良に関与する独立因子として、治療4週後のChild score 2点以上の悪化(p=0.003)が有意であった。放射線治療 15例のうち、Child score悪化を認めなかった症例が9例(60%)に認められた。
動注群にsorafenibに移行した症例が1例、sorafenib群に動注に移行した症例が1例、放射線治療を行った症例が2例存在し、2種類以上の治療を施行した症例ではその他の症例と比較し有意に予後延長の傾向があった。【結論】
Vp3,4はSorafenib導入例の独立した予後不良因子であり、治療反応性に乏しい症例では肝予備能悪化の前に他治療に適切に移行することが予後を延長させる。放射線治療は高度門脈侵襲例では現時点では緩和的な位置づけだが、肝予備能を温存させられる症例も存在し、今後Sorafenib併用などの組み合わせ治療が期待される。
索引用語 進行肝細胞癌, 門脈浸潤