セッション情報 パネルディスカッション18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

小腸疾患に対する診断治療の現況と今後の展望

タイトル 外PD18-1:

小腸疾患における血中ヒト腸型脂肪酸結合蛋白(I-FABP)の有用性について

演者 坂本 薫(新潟大大学院・消化器・一般外科学)
共同演者 神田 達夫(新潟大大学院・消化器・一般外科学), 畠山 勝義(新潟大大学院・消化器・一般外科学)
抄録 【背景】小腸疾患の診断は、内視鏡やCT等の画像診断技術が向上しているとはいえ容易ではない。血液・生化学検査はその簡便性と客観性で有効な検査方法であるが、既存のバイオマーカーで小腸疾患を鑑別することは困難である。ヒト腸型脂肪酸結合蛋白(I-FABP)は小腸粘膜上皮細胞に特異的に存在し、小腸疾患に特異的な血中マーカーとして期待されている。今回、我々は、急性腹症患者における血中I-FABP値を測定し、小腸疾患の診断マーカーとしての有用性を検討した。【対象と方法】新潟大学を中心とした多施設共同研究で、急性腹症と診断された361名を対象とし、抗ヒトI-FABP特異抗体を用いたsandwich ELISA法により血中I-FABP値を測定した。さらに、新潟大学単一施設研究として上記の追補試験を行い、腸閉塞症と診断された37名を対象に、血中I-FABP値を測定した。【結果】多施設共同研究361名中、52名が虚血性小腸疾患(虚血群)、165名が非虚血性小腸疾患(非虚血群)、144名が非小腸疾患(非小腸群)と診断された。平均血中I-FABP値は、虚血群で40.7±117.9 ng/ml、非虚血群で 5.8±15.6 ng/ml、非小腸群で 1.8±1.7 ng/ml であり、虚血群および非虚血群は非小腸群と比較して有意に高値であった(p < 0.0001)。血中I-FABP単独での小腸虚血診断能は、感度 78.8%、陽性的中率 33.6%、陰性的中率 95.4% で、小腸疾患に対する診断能は、特異度 88.9%、陽性的中率 86.9%、陰性的中率 53.6% と従来の生化学マーカーよりも優れていた。また、単一施設研究 37 名中、24名に手術が施行され 10 名に小腸虚血を認めたが、虚血の範囲とI-FABP値の間に相関が認められた(相関係数0.6707、p = 0.0338)。【結語】血中I-FABPは小腸疾患、特に虚血などの粘膜傷害を伴う疾患の診断マーカーとして有用であると思われた。また血中I-FABP値は小腸障害の重症度と相関することが示唆された。
索引用語 I-FABP, 小腸疾患