セッション情報 パネルディスカッション18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

小腸疾患に対する診断治療の現況と今後の展望

タイトル 消PD18-2:

プロトンポンプ阻害剤の健常人小腸粘膜に対する影響を調べるpilot試験

演者 藤森 俊二(日本医大・消化器内科)
共同演者 高橋 陽子(日本医大・消化器内科), 坂本 長逸(日本医大・消化器内科)
抄録 【目的】近年施行された, 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を健常人ボランティアに投与して小腸病変を検討した試験の多くには, NSAIDsとともにプロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されている. 近年, PPIによる胃内低酸環境が腸内細菌叢の変化をもたらし, NSAIDsの小腸粘膜傷害を増強させることがマウスを用いた実験で示された. 健常人ボランティアにPPIの単独投与を行い, 小腸粘膜に対するPPIの影響を調べることが今回の研究の目的である. 【方法】健常男性ボランティア6例(36.5 ± 4.3歳)が今回の検討対象である. 対象に対して試験前カプセル内視鏡(CE)を行い, その後omeprazole 20mgを1日1回夕食後に14日間投与し, 最終投与翌朝に試験後CEを施行して, omeprazole投与前後の小腸粘膜欠損の数を比較した. 本検討は当大学倫理委員会の承認を得て2007年に行われた(学会未発表). 【結果】薬剤の副作用で脱落した症例はいなかった. また, すべてのカプセル内視鏡検査で小腸全長が評価でき, 検査評価で除外された症例も認められなかった. 試験前CEで小腸粘膜欠損を認めなかった症例は5例で, うち1例に試験後CEで明らかな小腸粘膜欠損2か所を認めた. 1例は試験前CEで6か所小腸粘膜欠損認め, 試験後CEでは小腸粘膜欠損は12か所に増加していた. この症例に対してomeprazole投与終了3週間後に3回目のCEを行い, 小腸粘膜欠損は7か所に減少し, 小腸粘膜傷害は軽快傾向にあることを認めた. 【結論】PPIの単独投与はNSAIDs起因性小腸粘膜傷害を増強させるだけでなく, 小腸粘膜傷害を引き起こす可能性が認められ, 今後追試試験が望まれる.
索引用語 PPI, 小腸傷害