セッション情報 パネルディスカッション18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

小腸疾患に対する診断治療の現況と今後の展望

タイトル 消PD18-4:

低用量アスピリン関連小腸粘膜傷害の診断・評価におけるPPI併用の影響

演者 遠藤 宏樹(横浜市立大附属病院・内視鏡センター)
共同演者 酒井 英嗣(横浜市立大附属病院・内視鏡センター), 中島 淳(横浜市立大附属病院・内視鏡センター)
抄録 【目的】低用量アスピリン(LDA)による小腸傷害の治療・予防法についてはまだ十分研究されておらず、特に酸分泌抑制薬であるPPIの小腸傷害に対する効果は改善・増悪の両報告があり、議論の余地がある。今回カプセル内視鏡(CE)を施行したLDA常用患者においてPPI併用の有無により小腸粘膜傷害に違いがあるかを検討した。【方法】CEを施行した症例中、LDAを常用していた74症例をPPI併用症例(PPI群:n=28)とPPI非併用症例(非PPI群:n=46)に分け、小腸粘膜変化を後ろ向きに比較検討した。小腸粘膜変化は、CE粘膜所見(発赤・びらん・潰瘍)とCEスコアによる粘膜重症度の評価によって比較した。病変存在部位については、CE通過時間をもとに比較した。またPPIの種類により小腸傷害に差があるかも検討した。【成績】潰瘍は非PPI群(中央値0、平均値2.1)と比べPPI群(中央値0.5、平均値4.3)で有意に多かった(P=0.009)。領域ごとの解析では、下部小腸でPPI群は非PPI群より潰瘍が有意に多く(P=0.014)、また有意差はないが上部小腸でも同様の傾向を認めた(P=0.065)。発赤とびらん所見に関しては各群間で差を認めなかった。CEスコアはPPI群で中央値が237(8-2140)で13.3%の症例が中等症/重症に分類されたのに対し、非PPI群では中央値が247(0-4492)で6.5%の症例が中等症/重症に分類された(P=0.933)。領域ごとの評価でもCEスコアは各群間で差を認めなかった。またPPIの種類(lansoprazole、rabeprazole、omeprazole)により小腸傷害に差を認めなかった。【結論】本研究はLDA常用者の小腸粘膜変化の違いをPPI併用の有無からアプローチした初の研究である。PPI併用者で非併用者より潰瘍性病変を高頻度に認め、一方発赤やびらんの軽微な炎症所見では差を認めなかったことから、PPIはLDA小腸傷害の増悪に関与している可能性が示唆された。原因として、小腸傷害攻撃因子である腸内細菌叢がPPIの酸分泌抑制により変化したことなどが予測されるが、解明には今後さらなる検討が必要である。
索引用語 低用量アスピリン, カプセル内視鏡