セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専38(内視鏡):

多発下咽頭癌の一例

演者 中村 義孝(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 田口 宏樹(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 船川 慶太(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 牧野 智(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 小牧 祐雅(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 前田 拓郎(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 有馬 志穂(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 佐々木 文郷(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 山路 尚久(鹿児島大学病院光学医療診療部), 田ノ上 史郎(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 瀬戸山 仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 沼田 政嗣(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 藤田 浩(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 嵜山 敏男(鹿児島大学病院光学医療診療部), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 61歳の男性。近医での上部消化管内視鏡検査時に右下咽頭の腫瘤を発見された。生検で扁平上皮癌と診断され、精査加療目的に当科紹介入院となった。全身麻酔下に佐藤式彎曲型喉頭鏡を用いて喉頭を展開し内視鏡観察を行ったところ、右披裂喉頭蓋裏面に径約20mmの0-I+IIb病変を認めた。Narrow Band Imaging(以下NBI)で病変はbrownish areaとして認識され、日本食道学会分類Type B-1、井上分類V-1の血管パターンを認めた。ルゴール散布では境界明瞭な不染帯となった。超音波内視鏡所見より上皮内癌と診断し、内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESD)を行った。切除標本では一部に上皮下進展を認めたが、深部断端陰性であり脈管侵襲は認めなかった。側方断端が陽性であったが、内視鏡所見との対比により標本作成時の組織の挫滅による腫瘍の断端露出と考えられた。上皮下進展を認めたため、十分なInformed Consentのもと、内視鏡、CT、頸部エコーにて慎重に経過観察を行う方針とした。ESD後1ヶ月目の内視鏡検査にて右披裂喉頭蓋裏面にNBI観察で新たにbrownish areaとして認識される0-IIb病変を認め、生検で扁平上皮癌が疑われた。遺残再発の可能性を考え、全身麻酔下に喉頭展開を行い内視鏡観察を行ったところ、初回ESD後の瘢痕部とは離れた部位に病変が存在しており、この時点で初めて別病変であることが判明した。再度ESDを行ったところ深部断端、側方断端、脈管侵襲陰性で、一括完全切除であった。初回ESD後8ヶ月現在、再発を認めていない。初回ESD施行時の内視鏡写真を確認すると、新たに発見された病変は先に切除された病変からやや離れており、ルゴール散布にて淡染となっているが、術後の炎症を考慮しルゴールをやや控えめに散布したことも見落としの一因と考えた。近年、NBI内視鏡の普及に伴い中・下咽頭表在癌の発見が容易となり、同時多発病変も報告されるようになってきた。今回我々は、ESD後に別病変を発見し、ESDを追加した多発下咽頭癌症例を経験した。下咽頭領域は観察困難な部位であり、多発の可能性を念頭に下咽頭領域全域を詳細に観察する必要があると考えられた。若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 下咽頭癌, ESD