セッション情報 パネルディスカッション18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

小腸疾患に対する診断治療の現況と今後の展望

タイトル 消PD18-8:

慢性肝疾患および腎不全の合併例における小腸病変:Vascular Ectasiaの実態とその診断におけるカプセル内視鏡の意義

演者 渡邊 一弘(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科)
共同演者 岡 政志(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科), 持田 智(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科)
抄録 【目的】カプセル内視鏡(VCE)が普及し,小腸疾患の診療は大きく進歩した。 当院はウイルス性慢性肝疾患および慢性腎不全の患者が多く,VCEはこれら症例における消化管出血の精査で実施される場合が多い。 そこで,これら症例におけるVCE所見と臨床像との関連を解析することで,小腸病変の実態とその診断における同検査法の意義を検討した。 【方法】2005年1月から2012年2月までにVCEを実施した151症例を対象とし,延べ188検査における所見と, 患者背景,基礎疾患,臨床像との関連を検討した。 【成績】男90例,女61例で年齢(平均±SD)は64.2±18.3歳。基礎疾患としては肝硬変が23例,慢性腎不全が34例で認められ,うち7例は両疾患を合併していた。検査目的は下血96例,原因不明の貧血54例,便潜血陽性2例,腹痛精査5例,他の画像検査による小腸病変疑い31例であった。VCEで小腸病変が認められたのは140例(74.5%)で,その所見はVascular Ectasiaが48例で最も多く,潰瘍19例,びらん16例,粘膜発赤15例が次いでいた。活動性出血は14例,黒色腸液は11例,その他腫瘍などの所見は25例で観察された。Vascular Ectasiaの認められた症例は観察されなかった症例に比して,肝硬変,腎不全の両疾患を合併している症例の頻度が高率であったが(12.1%:4/33 vs 3.0%:3/99,p<0.05), 何れか一方のみを併発している症例の頻度には差異が見られなかった。また,小腸潰瘍,びらん,腫瘍性病変については,基礎疾患の有無で差異が認められなかった。 【結論】肝硬変および腎不全では,小腸粘膜の末梢血管に病変が生じる可能性があり, これらの基礎疾患を有する症例が貧血ないし消化管出血を呈する場合は,小腸のVascular Ectasiaを念頭において精査する必要がある。特に,両疾患を併発している症例はVascular Ectasiaのhigh risk群であり,その診断にはVCEが有用であると考えられた。
索引用語 カプセル内視鏡, Vascular Ectasia