セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル

膵仮性嚢胞内の仮性動脈瘤にコイル塞栓術が奏功した一例

演者 藤井 佑介(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科)
共同演者 八木 洋輔(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 西尾 昭宏(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 吉田 竜太郎(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 居軒 和也(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 三浦 翔(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 印藤 直彦(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 佐々木 翔(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 黒田 純子(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 末吉 伸行(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 矢野 雄飛(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 山岡 優子(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 廣吉 康秀(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 吉中 勇人(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 阿南 隆洋(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 松井 佐織(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 菅原 悦子(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 渡辺 明彦(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 菅原 淳(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 向井 秀一(淀川キリスト教病院 消化器病センター 消化器内科), 山田 勝之(淀川キリスト教病院 放射線科)
抄録 【症例】50歳代男性【主訴】左上腹部痛【既往症】アルコール性慢性膵炎【現病歴】2009年4月より他院でアルコール性慢性膵炎と診断され、薬物療法を行っていた。腹部CTで膵尾部に15mm大の膵仮性嚢胞を認めたが、経過観察となっていた。2012年3月に左上腹部痛を自覚し、近医で鎮痛剤を投与されるも、症状の改善が無いため、当科を紹介受診した。血液検査で、WBC11700/μl、CRP2.22mg/dlと炎症反応の上昇を認めたが、AMY126U/lと膵酵素はほとんど上昇を認めなかった。腹部CTで膵周囲の浮腫性変化と、40mm大に増大した膵仮性嚢胞内に20mm大の動脈瘤を認め、慢性膵炎の急性増悪及び仮性動脈瘤の疑いで入院した。【入院後経過】入院後絶食、輸液、蛋白分解酵素阻害薬、抗生剤(MEPM0.5g×3/日)投与にて治療を開始した。第3病日には腹痛は消失し、炎症反応も低下傾向を認めた。しかし、第7病日の腹部CTで仮性動脈瘤が35mmにまで急激な増大を認めた。同日、腹部血管造影検査を施行し、バルーンカテーテルにて脾動脈閉塞下に仮性動脈瘤の造影を行った。マイクロカテーテルを瘤内に留置し、GDCコイル11個で塞栓術を施行した。瘤内の血流は消失したので、治療を終了した。コイル塞栓後、一過性の炎症反応上昇を認めたが、やがて鎮静化した。第17病日より食事を開始し、病状再燃なく第28病日に退院となった。以後、MRIでは明かな動脈瘤の再発なく、外来にて経過観察中である。【考察】急性膵炎および慢性膵炎の10~20%に膵仮性嚢胞が発生し、そのうちの14%程度で嚢胞内出血が合併すると言われている。出血の機序として、嚢胞壁の壊死や消化管との瘻孔、本症例のように、炎症が動脈に波及し仮性動脈瘤が形成され、破綻を来たすなど様々である。仮性動脈瘤に対する治療であるが、外科的治療か血管造影での塞栓術での加療を行うことが一般的である。塞栓術では治療後再発の報告もあり、手術療法では、周囲臓器との癒着のため多臓器合併切除に至ることも少なくない。本症例ではコイル塞栓術で再発無く経過しており、有効な治療であったと考えられたので、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 膵仮性嚢胞, 仮性動脈瘤