セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル

血液透析患者に発症した非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の一例

演者 亀田 聡士(大阪大学 消化器内科)
共同演者 小倉 智志(大阪大学 消化器内科), 新崎 信一郎(大阪大学 消化器内科), 山田 拓哉(大阪大学 消化器内科), 森下 直紀(大阪大学 消化器内科), 井上 隆弘(大阪大学 消化器内科), 江崎 久男(大阪大学 消化器内科), 宮崎 昌典(大阪大学 消化器内科), 薬師神 崇行(大阪大学 消化器内科), 西田 勉(大阪大学 消化器内科), 渡部 健二(大阪大学 消化器内科), 飯島 英樹(大阪大学 消化器内科), 木曽 真一(大阪大学 消化器内科), 平松 直樹(大阪大学 消化器内科), 辻井 正彦(大阪大学 消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学 消化器内科)
抄録 症例は40歳代女性。1型糖尿病に伴う慢性腎不全のため28歳時から血液透析中、2012年2月上旬から強い腹痛・下痢が出現した。近医にて抗生剤投与を受けるも改善を認めないため、2週後当科入院となった。腹部造影CT検査にて小腸全体に拡張を認めており、腹腔動脈・上腸間膜動脈・下腸間膜動脈の起始部から分枝にかけて動脈硬化に伴う高度狭窄を認めていたが、腸管の造影効果は保たれていた。感染性腸炎に伴う麻痺性イレウスと考え絶食・抗生剤・中心静脈栄養による保存的加療を行ったところ、炎症所見の軽度改善を認めたが、腹痛は持続し、小腸の拡張も改善を認めなかった。下部消化管内視鏡検査では、回腸末端にびらん・潰瘍が全周性に多発しており、小腸虚血に伴う変化が考えられたが、CT上動脈硬化性変化が強く、血管内治療や外科的治療は困難と判断し、保存的加療を継続した。第26病日、腹部造影CTで腸管拡張は変化ないものの腹痛がさらに増悪し、腸管減圧および症状緩和が必要と判断しイレウス管を挿入した。翌日血液透析中に腹痛が増強し血圧低下をきたしたため透析を中断、帰室後心肺停止となり昇圧処置を行うも永眠された。剖検では、全小腸にわたりびまん性に粘膜障害を認め、炎症は筋層に及んでいたが壊死性変化は認められなかった。また腹腔動脈・上腸間膜動脈・下腸間膜動脈の高度粥状硬化を認めた。心肺に明らかな急性変化は認められず、以上より非閉塞性腸管虚血症(NOMI)に伴う循環不全が死因と考えられた。NOMIはショックなどによる循環血漿量の減少を契機に発症することが知られているが、血液透析に関連して発症することも報告されている。今回我々は、血液透析患者に発症したNOMIの一例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 非閉塞性腸管虚血症, 血液透析