セッション情報 パネルディスカッション18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

小腸疾患に対する診断治療の現況と今後の展望

タイトル 内PD18-12:

CT enteroclysis/enterographyによる新たな小腸疾患診断の展望

演者 橋本 真一(山口大大学院・消化器病態内科学)
共同演者 清水 建策(山口大附属病院・光学医療診療部), 坂井田 功(山口大大学院・消化器病態内科学)
抄録 【背景】カプセル内視鏡(CE)やバルーン内視鏡(BE)の普及により,多くの症例で小腸疾患の診断・治療が可能となったが,腸管狭窄や高度の癒着を合併する症例ではCE滞留の危険性が高く,BEでも深部挿入が難しいことが多い.CT enteroclysis/enterography(CTE)は,小腸を陰性造影剤で拡張してDynamic CTを撮影する検査方法であり,欧米ではその有用性が多く報告されている.当院では2008年よりCTEを導入し,現在では小腸検査法の一角を担っている.【目的】当院でこれまでに施行したCTE症例について検討し,検出された所見の臨床的意義について考察する.【対象】2008年4月より2012年3月までに当院にてCTEを施行した163件.平均年齢は59.1歳(13~88歳).検査目的はOGIB 74件,クローン病・クローン病疑い47件,小腸腫瘍疑い25件,その他17件であった.【成績】CTEで小腸に異常所見を認めた割合は63.2%(103/163件)であった.主要な所見の内訳は,壁肥厚や造影効果増強などの炎症所見50件,血管性病変26件,狭窄24件,腫瘍性病変16件,瘻孔4件であった.炎症所見は30件がクローン病であり,それ以外は薬剤起因性粘膜障害やベーチェット病,原因不明の小腸潰瘍等であった.炎症の程度も造影パターンや周囲脂肪織濃度から推測可能であった.血管性病変では,特にAVMの診断・治療方針決定に有用であった.腫瘍性病変では,CEで診断が難しかったGISTもCTEで明瞭に描出できた.8件で内視鏡的治療や手術が施行され,病変に分布する血管から小腸における局在が推測できた.狭窄は16件がクローン病であったが,薬剤起因性粘膜障害も3件あり,5件でCTE後に予定していたCEを中止した.CTEによる重篤な偶発症はなかった.【結論】CTEは潰瘍や腫瘍などの壁肥厚を伴う病変や,狭窄・瘻孔の検出能に優れており,血管の情報も得られることから,粘膜面の詳細な観察が可能なCEおよびBEと併用することにより,診断能と安全性の向上が期待できると考えられた.
索引用語 CT enteroclysis, CT enterography