セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研37:

発熱、肝機能異常を契機に診断された粟粒結核の1例

演者 小田 桂子(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科)
共同演者 具嶋 敏文(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科), 中島 遥美(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科), 渡邊 高徳(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科), 上野 新子(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科), 小河 一彦(国家公務員共済組合連合会浜の町病院内分泌代謝科), 高橋 和弘(国家公務員共済組合連合会浜の町病院肝臓科)
抄録 【症例】 70歳台、女性。
【主訴】 全身倦怠感と発熱。
【現病歴】 2型糖尿病、高血圧症、虚血性心臓病、脂質異常症で外来通院中であった。入院3日前より全身倦怠感を自覚し、インスリンは自己中止していた。2011年9月中旬に自宅で転倒し動けなくり救急車で来院し入院となった。
【生活歴】 飲酒なし。 【既往歴】 特記事項なし。
【現症】 身長 153cm、体重 56.2kg、BMI 24.0。血圧 194/71 mmHg、脈拍92/分、体温 39.2 ℃。意識清明、黄疸は認めなかった。呼吸音に異常を認めず、腹部に圧痛は認めなかった。
【検査成績】 軽度の汎血球減少を認めた、CRPは6.8 mg/dlと上昇していた。AST 140 IU/l、ALT 52 IU/l、LDH 653 IU/l、ALP 432 IU/l、γGTP 72 IU/lと肝機能異常を認めた。肝炎ウイルス関連マーカーは陰性であった。胸部X線検査、胸部CTでは気管支周囲の軽度の炎症を認めるのみであった。腹部エコー、腹部CTでは軽度脾腫とperiportal edemaを認めるものの、腹腔内臓器に異常を認めなかった。MRCPで胆管に異常を認めなかった。血液、培養は陰性であった。
【入院後経過】 明らかな感染巣は不明であるものの、細菌感染症の可能性が高いと考え抗菌剤の投与を行ったが、39℃台の発熱は持続し、炎症反応、肝機能異常も改善しなかった。肝生検を施行したところ、門脈域を中心にinterface hepatitisを伴う炎症所見を認め、多核巨細胞を含む類上皮肉芽腫が散見された。Ziehl-Neelsen陽性抗酸菌を認め、骨髄からも巨細胞を伴う肉芽腫が検出されたため粟粒結核と診断した。EB、INH、REFの3剤併用療法を施行したところ、徐々に解熱し、炎症反応、肝機能も正常化した。
【考察】 粟粒結核は非特異的な症状を呈することが多く、特に本症例のように胸部に粟粒結核を示唆するびまん性小粒状影所見を認めない場合は診断に苦慮することが多い。肝生検が診断に有用であるという報告も多く、肝障害を伴う起炎菌不明の感染症では、肝生検も検討する必要があると考えられた。
索引用語 粟粒結核, 肝生検