セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専90:

腸間膜原発平滑筋腫の1切除例

演者 田中 宏明(県立宮崎病院)
共同演者 池田 拓人(県立宮崎病院), 中村 豪(県立宮崎病院), 小倉 康裕(県立宮崎病院)
抄録 [症例]55歳の女性。検診にて腹腔内腫瘤を指摘され、精査加療目的で当科へ紹介された。触診では左上腹部に手拳大の硬い腫瘤を触れ、可動性不良であった。腹部エコーでは境界明瞭、内部heterogeneousな腫瘤として認め、CTでは80×70×45mm大の境界明瞭,辺縁は平滑で内部には一部脂肪濃度を呈する領域を散在性に認めた。MRIではT1WI,T2WIにて大部分は低信号で境界明瞭な分葉状の実質性腫瘍として描出された。術前診断は原発不明腫瘍の診断で、腹腔鏡下に切除術を施行した。腫瘍は手拳大で横行結腸間膜と茎状に連なる形で存在し、周囲組織への浸潤は認めなかった。茎部を自動縫合器で切離して腫瘍を摘出した。摘出標本では腫瘍は10×6.5×4.5cm大で、分葉状の弾性硬であった。病理所見では免疫染色にてc-kit, CD34が陰性、抗平滑筋アクチン染色が陽性であり腸間膜原発の平滑筋腫と診断した。術後約2年経過するが再発兆候は認めていない。[考察] 腸間膜原発の腫瘍は稀であり、その中でも平滑筋腫は特に稀である。本邦では1985年から2012年までの期間で我々が調べえた限りでは我々の症例も含め13例であった。腫瘍の局在範囲については、超音波検査やCT検査により、容易に同定することはできても、腸間膜腫瘍と術前診断をつけるのは困難であり、報告例でも術前診断がついていたのは本症例も含めて13例中5例であった。また画像による腫瘍の質的診断に関しては、ほとんど良悪性の鑑別は不可能であるのが現状である。治療に関しては、完全切除が第一選択である。病理組織学的には、HE染色にて紡錘形細胞の錯走増生を認め、免疫組織学的に抗平滑筋アクチン染色、desmin染色が陽性、c-kit染色、S-100蛋白染色、CD34染色が陰性である。しかし良悪性の鑑別は難しく、組織学的所見が生物学的悪性度と必ずしも一致しない。今回横行結腸間膜原発の平滑筋腫の1切除例を経験したので文献的考察を含め報告する。
索引用語 腸間膜腫瘍, 平滑筋腫