セッション情報 一般演題

タイトル 041:

自然破裂で発症し,待機的に手術された膵粘液性嚢胞腫瘍の1例

演者 小野 英樹(大分市医師会立アルメイダ病院)
共同演者 岡本 和久(大分市医師会立アルメイダ病院), 阿南 重郎(大分市医師会立アルメイダ病院), 田崎 貴子(大分市医師会立アルメイダ病院), 福田 健介(大分市医師会立アルメイダ病院), 有木 晋平(大分市医師会立アルメイダ病院), 太田 正之(大分大学医学部附属病院消化器外科)
抄録 症例は28歳女性で,生来健康であった.突然下腹部痛が出現し軽快しない為当院外来を受診した.既往歴に特記すべきことはなく,外傷や膵炎の既往もなかった.身体所見で腹部は平坦・軟であったが下腹部で軽度の圧痛と反跳痛とを認めた.入院時血液生化学所見で白血球及び膵酵素の軽度上昇を認め,またCA19-9が23800u/l と著明な高値であった.腹部造影CTでは,膵体尾部に6×3cm の境界明瞭な嚢胞性腫瘍がみられ壁の石灰化および内部の隔壁様構造を伴っていた.また腹水が中等量貯留していた.腹部MRIでは腫瘍と膵管との交通は明らかではなかった.腹水の培養及び細胞診で有意な所見を認めなかった.超音波内視鏡検査にてCTと同様の所見に加えて壁在結節を同定した.以上の所見から膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)の自然破裂と診断した.一旦は緊急手術を考慮したが,入院数時間後に圧痛や反跳痛は消失し,腹部エコーで腹水はほぼ消失していたので待機的手術の方針とした.入院第8病日に退院し,本人の希望により紹介先病院で外科手術が実施された.腹腔鏡下に手術が開始され,体尾部に緊満した嚢胞性腫瘍を認めた.浸潤や転移など積極的に悪性を示唆する所見は認められなかったため腹腔鏡下膵体尾部切除術が施行された.嚢胞径は95×80mm であり,嚢胞内腔には粘液結節を数個認めた.病理組織結果は粘液性嚢胞腺種であった.術後経過は良好であり第10病日に退院した.膵MCNの増大には女性ホルモンが関連しているといわれる.MCNの非典型例として妊娠・出産を契機に破裂発症する症例報告は散見される.しかし本症例のように妊娠していない症例で破裂発症することはきわめて稀である.さらに今回は待機的に腹腔鏡下手術を施行しえたため,貴重な症例と考え報告する.
索引用語 MCN, 自然破裂