セッション情報 パネルディスカッション18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

小腸疾患に対する診断治療の現況と今後の展望

タイトル 消PD18-14:

Crohn病小腸病変に対する小腸造影法の有用性

演者 辰巳 健志(横浜市立市民病院・外科)
共同演者 杉田 昭(横浜市立市民病院・外科), 小金井 一隆(横浜市立市民病院・外科)
抄録 目的:Crohn病(以下CD)は小腸に病変を有する症例が多く,その的確な診断は適正な治療法の選択に不可欠である.近年,小腸病変の評価にはカプセル内視鏡や小腸内視鏡なども行われているが,狭窄や瘻孔を有するCDで十分な情報を得られないことがある.今回,小腸造影法による各病変の描出能を詳細に分析し,その有用性を検討した.対象・方法:2011年4月から2012年3月までの自験CD症例に行った小腸造影総件数は200件(平均透視時間25.6分),腸管切除症例は125例であった.小腸造影の描出能は小腸造影と手術所見が対比可能であった88症例で評価した.結果:術中に確認した小腸320病変に対し,小腸造影で術前に診断した病変は229病変(71.6%)であった.そのうち瘻孔35病変中,20病変(57.1%)が小腸造影で術前診断可能であった.瘻孔の種類別検出率は腸管腸管瘻70.1%(17/24),膿瘍に交通する瘻孔66.6%(2/3),腸管膀胱瘻33.3%(1/3),腸管皮膚瘻0%(0/5)で,描出できなかった15病変中9病変(60.0%)は瘻孔造影やCT検査で診断可能であった.狭窄285病変中,209病変(73.3%)が小腸造影で診断可能で,術前診断が困難であった76病変中54病変(71.1%)は軽度の狭窄であった.術前に切除予定とした96部位(単独病変・連続性病変はいずれも1部位とした)のうち,切除が不要であったのは5部位で,癒着による狭窄が1部位,腸管の温存目的の狭窄形成術を行ったものが4部位であった.小腸造影で総小腸長が200cm以下と診断した症例(n=27)は,200cm以上の症例(n=61)に比べて有意に腸管温存を目的とした小範囲切除を多く施行し(p=0.046),狭窄形成術施行例も多かった(p=0.042).小開腹術や広範な癒着のため病変部以外の小腸の術中検索が十分に行えなかった14症例では,小腸造影による術前の所見により検索は不要との判断が可能であった.結語:CDの小腸病変の診断で不可欠な要素は小腸の長さ,瘻孔・狭窄の部位,狭窄の程度・範囲,瘻孔の種類などであり,小腸造影はこれらのすべての情報を提供する検査法であることから,本法を積極的かつ的確に施行することが手術を含めた治療法の選択に重要である.
索引用語 クローン病, 小腸造影法