セッション情報 一般演題

タイトル 135:

爪楊枝誤飲による小腸穿孔、限局性腹膜炎の1例

演者 溝江 昭彦(唐津河畔病院)
共同演者
抄録 [はじめに]爪楊枝を誤飲し,回腸末端で穿孔して限局性腹膜炎を起こしたため開腹手術を要した症例を経験したので報告する.[症例]82歳(手術時),男性.アルツハイマー型認知症,高血圧,陳旧性心筋梗塞等の既往症あり.平成22年4月直腸癌の診断で直腸低位前方切除を施行(t1, n0, m0, stage I).術後は経過良好で再発の兆候なし.平成24年1月初旬より右側腹部痛が出現持続し食欲の低下も認められたため精査加療の目的で入院となった.腹部診察所見では右側腹部に圧痛がみられたが,デファンスはなく腸グル音は良好であった.血液データ上WBC 8000,CRP 6.3と炎症所見を認めたが生化学データに異常はなかった.腹部CT, MRI上右側腹部,回盲部周囲の浮腫と膿瘍の形成が認められた.腸管内に線状影がみられ異物が疑われた.限局性腹膜炎として治療を行ったが,症状が持続するため保存的治療では治癒困難と判断し,平成24年2月開腹手術を行った.術中所見にて回腸末端の壁は腫張・硬化し大網の癒着を認め,腸管内に細い棒状の異物を触知した.腸管内の異物が刺さって穿孔し限局性腹膜炎を起こして大網で被覆されたものと判断した.回腸を切開し異物を摘除したが,異物は爪楊枝であった.腸管穿孔部は円状に切除し縫合閉鎖した.術後経過は合併症なく良好であった.[まとめ] 爪楊枝誤飲による小腸穿孔,腹膜炎の症例を経験した.本症例は認知症があり爪楊枝を誤飲した記憶はなかった.文献上,異物誤飲による消化管穿孔は本邦では魚骨,欧米では鶏骨によるものが多く報告されている.爪楊枝誤飲によるものも稀ではなく,29年間で本邦報告64例を集計した文献もみられた.今後高齢化・認知症の増加に伴い,高齢者急性腹症の診療において注意すべき病態である.
索引用語 爪楊枝誤飲, 限局性腹膜炎