抄録 |
[背景]膵神経内分泌腫瘍(PNET)は希少疾患とみなされていたが、近年増加傾向にある。治療は切除可能な病変は外科的治療が第一選択であるが、切除不能の症例に対する本邦における薬物療法については、コンセンサスが得られたものはなかった。近年、mTOR阻害薬のエベロリムスが進行性PNETに対する進行抑制効果が示され、昨年12月に本邦で保険収載された。[目的]日本人のPNET症例に対するエベロリムスの効果および有害事象を検討する。[方法]RADIANT-3 (RAD001 in advanced neuroendocrine tumors) studyの日本人サブグループ解析結果を基にエベロリムスの1)効果と2)有害事象を検討する。3)更に当科からのエントリー症例を提示し、有害事象対策及び治療上の留意点について考察する。[結果]RADIANT-3では進行PNET患者が二重盲検法にてエベロリムス10mg/day投与群とプラセボ群に振り分けられ、主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。本邦からは40名登録され、23名がエベロリムス群、17名がプラセボ群に振り分けられた。RADIANT-3全体ではPFSの結果はそれぞれ11.0カ月と4.6カ月であり、日本人症例におけるPFSの中央値はそれぞれ19.45カ月と2.83カ月とエベロリムス群が有意に延長効果を認めた。日本人症例の有害事象としては発疹、粘膜炎、感染症、爪の異常、鼻出血、肺炎の頻度が高かった。Central reviewにおけるGrade3/4の間質性肺疾患の発症頻度はエベロリムス群で8.4%に認められ、RADIANT-3全体におけるエベロリムス群での発症頻度(2.0%)と比較し日本人症例で高かった。PNETにおけるエベロリムス療法において、これらの有害事象を如何にコントロールし、治療を継続していくかが重要なポイントとなる。今回のシンポジウムでは当科からのエントリー症例の中から感染症発生症例、間質性肺疾患発生症例の他、体液貯留や骨髄抑制が認められた症例を提示し当科における対処法について述べる。[結語]日本人の進行性PNET 患者に対しエベロリムスは有効な治療法である。長期予後については今後の症例の蓄積による評価が必要である。 |