セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専42:

腹水貯留と広範な腸管壁肥厚を伴った好酸球性胃腸症の1例

演者 田島 知明(国立病院機構熊本医療センター 消化器内科)
共同演者 光田 祐樹(国立病院機構熊本医療センター 消化器内科), 古閑 睦夫(国立病院機構熊本医療センター 消化器内科), 小林 起秋(国立病院機構熊本医療センター 消化器内科), 尾上 公浩(国立病院機構熊本医療センター 消化器内科), 村尾 哲哉(国立病院機構熊本医療センター 消化器内科), 中田 成紀(国立病院機構熊本医療センター 消化器内科), 杉 和洋(国立病院機構熊本医療センター 消化器内科), 村山 寿彦(国立病院機構熊本医療センター 病理診断部)
抄録 症例は71歳女性。平成24年5月初旬に下腹部痛、下痢が出現し近医を受診した。腹部エコーにて腸管壁肥厚と少量の腹水を指摘され感染性腸炎の診断にて内服での経過観察となった。治療開始1週間後の腹部エコーにて腹水は増加し、腹部膨満感も高度となったため精査・加療目的に当科紹介となった。来院時血液検査所見ではWBC10500/μl、Eos37%と増加を認め、CRPは0.09mg/dlと正常であった。また、非特異的IgEは1568IU/mlと高値であった。腹部エコー、造影CT検査では肝表面・両側腹部などに多量の腹水を認め、胃前庭部から小腸の広範囲に壁肥厚を認めた。上部消化管内視鏡検査では胃前庭部にびらん及び浮腫性変化を認めたため生検を行ったが、優位な好酸球浸潤は認めなかった。下部消化管内視鏡検査では回盲弁は浮腫状であり回腸末端への内視鏡挿入は困難であった。その他明らかな粘膜異常は認めなかったが、回盲弁と正常と思われた直腸粘膜からの生検にて好酸球浸潤を認めた。腹水の性状は滲出性、細胞診はClassIで細胞の大部分が好酸球であった(WBC 6500/μl,Eos 91.6%)。好酸球増多の鑑別疾患として寄生虫感染、血管炎、悪性腫瘍などは否定的であり、Talleyらの診断基準に基づき腹水貯留と広範な腸管壁肥厚と好酸球浸潤を伴った好酸球性胃腸症と診断した。また、本症例は蛋白漏出、吸収不良、消化管通過障害の所見には乏しくKleinらの病理学的病型分類では漿膜下主体型優位と考えられた。来院翌日から入院とし第2病日よりプレドニゾロン30mg投与を開始したところ症状は速やかに消失し、第7病日の腹部エコーにて腹水の消失を確認した。第12病日の血液検査では好酸球増多も改善し、プレドニゾロン10mgへ漸減した時点で再発なく、第18病日の造影CTにて腸管壁肥厚も改善しており、第21病日に退院となった。以後外来にてプレドニゾロン漸減、経過観察を行っている。腹水貯留と広範囲な腸管壁肥厚を伴った好酸球性胃腸症は比較的まれであると考えられたため若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 好酸球性胃腸症, 腹水