セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研62:

腸管壊死をきたしたS状結腸軸捻転症の一例

演者 森 晃佑(潤和会記念病院 外科)
共同演者 樋口 茂輝(潤和会記念病院 外科), 根本 学(潤和会記念病院 外科), 佛坂 正幸(潤和会記念病院 外科), 黒木 直哉(潤和会記念病院 外科), 岩村 威志(潤和会記念病院 外科)
抄録 S状結腸軸捻転症は、日常臨床においてしばしば遭遇する疾患である。多くは内視鏡的整復などの保存的治療で改善し、腸管壊死をきたす症例はまれである。腸管壊死をきたし、重篤な経過をたどったS状結腸軸捻転症の一例を経験したので報告する。症例は78歳の男性。平成24年7月、38℃台の発熱および意識障害が出現したため前医を受診し入院した。腹部膨満が高度であったため、入院翌日に注腸造影検査を施行したところ、bird beak signを認め、S状結腸軸捻転症が疑われたため、同日当科に緊急転院となった。来院時、体温は36.7℃であり、血圧低下と呼吸数増加、および軽度意識障害を認めた。下部消化管内視鏡検査を施行したところ、S状結腸部に狭窄を認め、内視鏡を用いて狭窄部を通過させ、経肛門的に減圧チューブを挿入すると暗赤色調の血性排液を認めた。腸管粘膜も暗赤色調を呈しており、粘膜壊死が疑われた。血液検査では白血球の上昇は認めなかったが、CRP (5.70mg/dl) の上昇とCPK (7940IU/L) , AST (392IU/L) , ALT (283IU/L) , LDH (569IU/L) の上昇を認め、腹部CTでS状結腸部にwhirl signを認めた。これらの所見と内視鏡所見から腸管壊死をきたしていると考えられたため緊急で手術を行った。開腹すると、著明に拡張し暗赤色に変色した壊死腸管を視認した。左上腹部に単孔式人工肛門を造設し、直腸側は閉鎖するハルトマン手術を行った。切除範囲は直腸S状結腸部からS状結腸下行結腸移行部までの約80cmであった。術中から敗血症性ショックおよびエンドトキシンショックにより低血圧 (60/40mmHg) で循環動態が不安定であったため、術後にICUでPMX-DHPを行った。術後2日目よりDICを合併したが、トロンボモジュリンの投与を行い、DICおよび循環動態は徐々に改善した。患者は術後11日目にはICUを退室し、21日目には退院した。S状結腸軸捻転により重篤な腸管壊死をきたす症例があり、注意を要すると思われた。
索引用語 S状結腸軸捻転症, 腸管壊死