セッション情報 一般演題

タイトル 136:

原因不明の蛋白漏出性胃腸症に対し六君子湯(TJ-43)の投与が有効であった1例

演者 岩下 祐司(鹿児島県立大島病院 消化器内科DELIMITER鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 藤田 浩(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 山筋 章博(鹿児島県立大島病院 消化器内科DELIMITER鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 鮫島 洋一(鹿児島県立大島病院 消化器内科DELIMITER鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 上野 雄一(鹿児島県立大島病院 消化器内科DELIMITER鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 中澤 潤一(鹿児島県立大島病院 消化器内科DELIMITER鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 佐々木 文郷(鹿児島県立大島病院 消化器内科DELIMITER鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 山路 尚久(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 沼田 政嗣(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 船川 慶太(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 嵜山 敏男(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 井戸 章雄(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【はじめに】原因不明の蛋白漏出性胃腸症には確立された治療方針はなく、治療に難渋する症例も多い。我々は六君子湯の投与が有効であった症例を経験した。【症例】58歳の女性。主訴は下腿浮腫、食欲不振。2004年S状結腸癌に対し手術、術後化学療法を施行。2010年10月より下腿浮腫が出現し、同年11月に当院受診。総蛋白4.2 g/dl、アルブミン2.8 g/dlと低蛋白血症を認めたが、腎機能や心機能、肝予備能に異常を認めなかった。腹部CTでは小腸に浮腫状変化を認めた。寄生虫感染を疑う血清学的所見もなく、低蛋白血症の精査のため2011年2月に大学病院消化器内科へ転院。蛋白漏出シンチで小腸からの蛋白漏出所見を認め蛋白漏出性胃腸症と診断された。しかし全身精査の結果、蛋白漏出性胃腸症の原因となる基礎疾患を認めなかった。当院転院後、利尿剤投与と定期的なアルブミン補充を行ったが、アルブミンは2.0 g/dl前後で推移し、高度の下腿浮腫が遷延した。2011年9月の外来受診時もアルブミン2.1 g/dlと低値であった。この際、患者本人より漢方薬の使用に関する相談があり、食欲不振の改善と腸管浮腫に対する利水作用を期待し六君子湯の投与を開始した。投与開始後1ヶ月目にはアルブミン2.7 g/dlに上昇し、3ヶ月後にはアルブミンは4.0 g/dlと正常化し、下腿浮腫も改善が認められた。2012年3月の蛋白漏出シンチでは明らかな腸管からの蛋白漏出を認めず、アルブミン値も正常であった。【まとめ】六君子湯の効果として胃排出能促進、胃粘膜の血流増加・保護、消化管運動機能の改善作用などが報告されている。その他、消化吸収亢進作用、利水作用があると言われている。本症例では六君子湯の投与により蛋白漏出性胃腸症の改善が得られた。検索し得る限り本症に対する六君子湯の投与有効例の報告はなく、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 蛋白漏出性胃腸症, 六君子湯