セッション情報 シンポジウム「消化器疾患における新規治療法」

タイトル S2-06:

切除不能膵癌に対する新規化学療法Gemcitabine+erlotinib併用療法の有用性

演者 藤森 尚(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター)
共同演者 河邉 顕(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 寺松 克人(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 黒川 美穂(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 岩田 真悠子(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 山口 恵梨子(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 中村 吏(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 柿ヶ尾 佳奈(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 岡本 梨沙(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 原口 和大(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 隅田 頼信(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 國府島 庸之(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 吉本 剛志(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 福嶋 伸良(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 福泉 公仁隆(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 原田 直彦(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 中牟田 誠(国立病院機構九州医療センター消化器内科・臨床研究センター), 伊藤 鉄英(九州大学大学院医学研究院病態制御内科)
抄録 【背景】切除不能膵癌に対する新規治療法として分子標的薬のerlotinibが2011年7月に保険収載され、Gemcitabine(GEM)との併用療法のみ、一次治療限定で使用可能となった。治療成績はもちろんのこと、当初から懸念されている間質性肺疾患(ILD)の発生頻度や、二剤併用の忍容性など実地臨床において解明すべき点が未だ多い。【目的】当科で施行したGEM+erlotinib併用療法をまとめ、その有効性や安全性について検証する。【方法】2011年8月以降に当科でGEM+erlotinib併用療法(以下、併用群)を実施した切除不能膵癌9例をretrospectiveに解析した。ほぼ同時期にGEM単独療法(以下、単独群)を一次化学療法として実施した切除不能膵癌18例をコントロール群として、両群を比較検討した。【結果】平均年齢、PS、腫瘍径などの患者背景に両群で差を認めなかった。有害事象として、血液学的毒性に差を認めなかったが、併用群で胃炎、胸焼けなどの消化器症状(3/9:33%)と皮疹(8/9:89%)が有意に高率であった。一次化学療法が中止になった理由の内訳を見ると、単独群の多くはPD(10/15)であったが、併用療法ではPDによる中止は半数(3/6)に留まり、残りは有害事象(2例:消化器症状、1例:血球減少)によるものであった。また、併用群ではILD発生を認めなかったが、単独群で3例(16.7%)にILD発生を認め、GEM中止となった。最良総合効果は、PR/SD/PDの内訳が併用群2/6/1、単独群0/11/7、であり、病勢コントロール率は併用群で高率であった(89% vs 61%)。無増悪生存期間は併用群95日、単独群69日であり、有意差は認めなかったが、併用群で良好な傾向であった。【考察】今回の解析では併用群でILDが少ない傾向にあったが、少数例の解析であり今後症例の蓄積が必要である。単独群でもILD発生を認めており、GEM単独でも十分な注意が必要と考えられた。また、併用群の内2例は消化器症状からerlotinib中止となっており、忍容性には課題が残る。観察期間が短いもののGEM+erlotinib併用療法の治療成績は良好であり、有効な治療法の一つと考えられた。
索引用語 膵癌, erlotinib