セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専20:

後腹膜気腫をきたした直腸穿通の2例

演者 福島 真典(長崎県五島中央病院 内科)
共同演者 橋本 敏章(長崎県五島中央病院 外科), 吉川 大介(長崎県五島中央病院 内科), 岡本 健太(長崎県五島中央病院 内科), 川上 悠介(長崎県五島中央病院 外科), 北島 正親(長崎県五島中央病院 外科), 長置 健司(長崎県五島中央病院 放射線科), 伊藤 裕司(純真学園大学 保健医療学部医療工学科), 古井 純一郎(長崎県五島中央病院 外科), 神田 哲郎(長崎県五島中央病院 内科)
抄録 【はじめに】大腸の後腹膜穿孔・穿通は比較的まれである。また腹腔内に穿孔・穿通した場合に比べ腹膜刺激症状が少なく、診断が遅れ予後不良となることが多い。今回当院で直腸の後腹膜穿通を2例経験したので報告する。【症例1】65歳、女性。統合失調症にて近医通院中であったが、発熱、食欲不振、動作緩慢となり近医入院。翌日、炎症反応高値、腎障害出現のため精査加療目的に当院搬送となった。肺雑音なく、腹部に圧痛や腹膜刺激症状なし。感染源精査目的にCT施行したところ、直腸周囲から後腹膜に広範囲に広がるガス像を認め、直腸穿通と診断。同日緊急手術を施行した。上部直腸は脆く、穿通部位と考えS状結腸~上部直腸切除しHartmann手術施行。切除した直腸には5cm大の潰瘍を認め、直腸潰瘍穿通と診断した。術後経過は良好で術後26日目に精神科転科となった。【症例2】82歳、女性。高血圧にて近医通院加療中。前日より腹痛出現し、疼痛持続のため早朝当院救急外来受診。顔貌は苦悶様、腹部全体に自発痛を認めたが、腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CTにて直腸周囲から後腹膜に広範囲にガス像を認め、直腸穿通と診断。同日緊急手術を施行した。後腹膜内に便塊を認め、直腸S状部に穿通部あり。S状結腸~上部直腸切除しHartmann手術施行。切除標本に潰瘍や憩室、腫瘍性病変は認めず特発性直腸後腹膜穿通と診断した。現在術後経過観察のため入院中である。【考察】後腹膜気腫をきたす直腸穿通を2例経験した。腸管の後腹膜穿孔・穿痛は後腹膜内に限局するうちは臨床症状が乏しく、診断に難渋する例が多い。早期診断にはCTが有用であり、また腹部単純X線でも後腹膜ガス像の同定が可能な例も認める。急性腹症の鑑別として、後腹膜気腫をきたす腸管穿孔・穿通も念頭に置く必要があり、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 直腸穿通, 後腹膜気腫