セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専78:

顎骨種が診断の契機となったattenuated familial adenomatous polyposisの一例

演者 原田 英(九州大学病院消化管内科)
共同演者 江崎 幹宏(九州大学病院消化管内科), 浅野 光一(九州大学病院消化管内科), 前畠 裕司(九州大学病院消化管内科), 松本 主之(九州大学病院消化管内科), 北園 孝成(九州大学病院消化管内科), 吉野 総平(九州厚生年金病院消化管内科), 藤澤 聖(九州厚生年金病院消化管内科), 熊谷 好晃(九州大学大学院形態機能病理), 平橋 美奈子(九州大学大学院形態機能病理)
抄録 症例は18歳、男性.家族歴に大腸癌なし.平成23年8月、右下顎部の腫瘤を自覚したため近医耳鼻科を受診し、多発骨腫を指摘された.大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis: FAP)が否定出来ないことから九州厚生年金病院で大腸内視鏡検査を受けたところ多発腺腫あり、当科に入院となった.左頭頂部に腫瘤を触知したが皮膚・粘膜病変は明らかでなかった.大腸内視鏡検査では、横行結腸に約8mmの亜有茎性隆起と全大腸に散在する12個の微小隆起を認め、生検で腺腫と診断された.上部消化管内視鏡検査では、胃体部に密生する小ポリープと十二指腸に多発する扁平隆起ないし陥凹性病変を認め、胃病変は胃底腺ポリープ、十二指腸病変は腺腫と診断された.カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡を施行したところ、空腸に小隆起が多発し、生検で腺腫の組織像が確認された.消化管外病変として、頭部CTでは上下顎骨、蝶形骨、側頭骨、頬骨の多発骨種と左頭頂部の類上皮嚢胞を認めたが、腹部CTではデスモイドや実質臓器の腫瘤は明らかではなかった.網膜色素上皮過形成と甲状腺腫瘍も認められなかった.本人と家族の同意を得てprotein truncation testによるAPC検索を施行したところ、同遺伝子3’側(エクソン15コドン1099-1700)のtruncating mutationが確認された.以上のように、本例は18歳にもかかわらず大腸腺腫が極めて少ないこと、APC変異陽性であることから、attenuated FAP(AFAP)の発端者と考えられた.AFAPはAPCの単離・同定によって明らかとなったFAPの亜系であり、生殖細胞系APC変異陽性かつ軽微な大腸病変にとどまる病態である.本症の変異はAPCの5’側あるいは3’側に偏在する傾向があるとされており、本例は遺伝子型からもAFAPに矛盾しなかった.また、本例の臨床像から、APC3’側変異によるAFAPは、大腸外徴候として骨病変と十二指腸・小腸病変が顕著となる可能性が示唆された.
索引用語 FAP, 骨腫