セッション情報 ワークショップ「消化器疾患と生活習慣(病)」

タイトル W1-09:

慢性膵炎患者の生活習慣に対する意識調査および指導方法に関する検討

演者 肱岡 真之(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学)
共同演者 中村 太一(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 大野 隆真(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 五十嵐 久人(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 伊藤 鉄英(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学), 高柳 涼一(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学)
抄録 慢性膵炎は難治性膵疾患であり、日常生活における嗜好(飲酒、喫煙)、食事(脂質、香辛料)などの生活習慣がその病態に悪影響を及ぼす。最も効果のある慢性膵炎治療法は断酒であり、また禁煙も慢性膵炎の進行を抑制することが明らかになっている。臨床の現場では、膵疾患専門医のみならず、すべての消化器専門医が慢性膵炎患者の診療にあたり、飲酒や喫煙が害悪であることを理解しつつも、その指導方法はこれまで明確に体系化、明文化されておらず、その指導内容に差異が存在した。厚労省難治性膵疾患研究班によって示された「慢性膵炎における断酒・生活指導指針」により、患者指導の方向性が示され、指導する側の混乱は解消されたが、実際に患者側に正確に指導内容が理解されたかについてはこれまで検証されていない。今回我々は、九州大学病院肝臓膵臓胆道内科に通院中の慢性膵炎患者に対して、生活習慣に関する意識調査をアンケート法で検討したので報告する。検討した生活習慣は飲酒、喫煙、脂質の3つとし、各生活習慣に対する意識と対処法を比較検討した。まず、断酒・生活指導を行っている患者において、飲酒、喫煙続行例がどの程度存在するか検討した。飲酒継続は21%、喫煙継続は12%と、指導の効果がない症例が存在した。飲酒継続者は飲酒自体が害悪であることを認識しながらも(86%)、日常生活において飲酒自体を気にかけておらず(43%)、断酒の必要性を認識している患者が少ない (33%)ことから、まず断酒の必要性およびその方法を指導することが必要と考えられた。喫煙継続者は飲酒継続者とは異なり、喫煙自体の害悪を理解しておらず(50%)、飲酒に比べ指導が不十分であったと考えられた。脂質は3つの生活習慣の中で最も患者が日頃から気にかけており(76%)、その脂質制限の方法は脂質の絶対量を計測する患者は少なく(17%)、脂質を含むイメージの多い食事をひかえたり、変更したりすることで対処していることが判明した。指導に対する患者の理解度を把握し、それに応じて指導内容を変化させることが重要であると考えられた。
索引用語 慢性膵炎, 生活習慣