セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研57:

正中弓状靱帯による腹腔動脈狭窄、多発腹部内臓動脈瘤に対しステント留置、コイル塞栓を行い良好な治療効果を得たC型肝硬変の一例

演者 佐々木 聖奈(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 加茂 泰広(長崎大学病院消化器内科), 高原 郁子(長崎大学病院消化器内科), 内田 信二郎(長崎大学病院消化器内科), 妹尾 健正(長崎大学病院消化器内科), 坂本 一郎(長崎大学病院放射線科), 柴田 英貴(長崎大学病院消化器内科), 本田 琢也(長崎大学病院消化器内科), 田浦 直太(長崎大学病院消化器内科), 市川 辰樹(長崎大学病院消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 症例は54歳男性。1994年初回指摘のC型慢性肝炎の診断にて2011年4月にIFN治療を受けるもnull responderのため肝庇護療法で経過観察となっていた。2011年1月にクリオグロブリン腎症による慢性腎不全のため血液維持透析が導入された。腎移植の適応につき当院泌尿器科を紹介受診、C型肝硬変に対しての加療の可否につき当科入院となった。肝硬変はChild-Pugh grade C、画像上肝細胞癌は認めていない。入院後施行した腹部造影CTにて十二指腸壁内に1cm程度の動脈瘤と正中弓状靱帯の肥厚による腹腔動脈幹起始部の狭窄を認めた。無症状であったが動脈瘤破裂の危険性を考慮し腹部血管造影を行い、上前膵十二指腸動脈に1か所の動脈瘤を認め、更に後上膵十二指腸動脈に2か所、背膵動脈に1か所の径4mm大の動脈瘤を認めた。多発動脈瘤は腹腔動脈狭窄による血流改変が原因と考え、腹腔動脈狭窄に対するステント留置及び残存動脈瘤に対するコイル塞栓術を行った。術後経過は良好であり術後12日目に退院となった。術後外来での経過観察では問題なく経過していたが経過中に脾機能亢進症状と思われる汎血球減少が出現し、輸血を要することとなった。治療6カ月後の腹部CTでは再燃は認めなかった。 膵十二指腸動脈瘤は腹部内臓領域の2%と低率であるが長径に関わらず高率に破裂する非常に危険な病態である。本症例での動脈瘤の原因としては、CTにて正中弓状靱帯の肥厚及び腹腔動脈幹起始部の狭窄を認めており、狭窄により上腸間膜動脈からの求肝性側副血行路としての血流増加が起こり、動脈に血行学的ストレスが加わったことで発症したものと考えられた。腹腔動脈狭窄に対するステント留置及び腹部内臓動脈瘤に対するコイル塞栓術は破裂予防に於いては有用な治療と思われたが、有害事象も認めており適応については慎重な検討が必要である。
索引用語 動脈瘤, 血管塞栓術