セッション情報 一般演題

タイトル 084:

回盲部憩室炎から肝膿瘍及び門脈血栓を合併した一例

演者 池ノ上 実(宮崎大学医学部附属病院循環呼吸・総合外科)
共同演者 河野 文彰(宮崎大学医学部附属病院循環呼吸・総合外科), 仙波 速見(宮崎大学医学部附属病院循環呼吸・総合外科), 水野 隆之(宮崎大学医学部附属病院循環呼吸・総合外科), 長濱 博幸(宮崎大学医学部附属病院循環呼吸・総合外科), 清水 哲哉(宮崎大学医学部附属病院循環呼吸・総合外科), 中村 都英(宮崎大学医学部附属病院循環呼吸・総合外科)
抄録 71歳男性。生来健康。全身倦怠感と発熱を主訴に近医を受診した。感冒の診断のもと内服薬にて加療されるも症状が軽快しないため、胸腹部CT検査が施行されたところ上腸間膜静脈血栓と上行結腸の炎症性変化を認めたため精査加療目的で当科に紹介入院となった。同日施行された造影CT検査にて右側結腸を中心に多数の憩室を認め、上行結腸には憩室炎を疑う周囲の炎症所見を認めた。また回結腸静脈から上腸間膜静脈および門脈左枝末梢にかけて血栓の形成を認めた。さらに肝内には周囲がenhanceされる肝膿瘍を疑う結節病変を多数認めた。以上より上行結腸憩室炎とそれに併発した上腸間膜静脈・門脈血栓症とそれに続発した肝膿瘍の診断にて抗生物質と血栓溶解療法を行う方針となった。ワーファリン、ヘパリンによる抗凝固療法とSBT/ABPCによる保存的加療が開始された。治療開始に伴い徐々に軽快し、CT検査にて血栓の縮小、回盲部の炎症所見の改善を認めた。入院10日後の下部消化管内視鏡にて多発する回盲部の憩室を認めるも、活動性炎症所見は指摘されなかった。また血液培養では細菌は検出されず、アメーバ抗体も陰性であった。また便培養からもVibrio, Campylobacter, Salmonellaなどは検出されなかった。門脈血栓の原因については、憩室炎やアメーバ腸炎といった回盲部の炎症が門脈末梢に波及して血栓を形成し、経門脈的に散布された血栓が肝内に多発する微小膿瘍を形成したと考えられ、患者は入院後19日で軽快退院し現在も再発なく経過している。門脈血栓症は外傷、腹部外科手術後、肝硬変症、腫瘍、感染症など様々な疾患に合併する疾患である。また門脈血栓の合併症として腸管壊死や肝膿瘍があげられる。門脈血栓においては通常は抗凝固療法と抗生剤により保存的に加療されるが、腸管壊死や膿瘍の悪化を伴った場合は外科的な介入が必要になる。今回我々は上行結腸憩室炎を契機に門脈血栓と肝膿瘍を形成した症例を経験したので若干の文献的考察を交えて報告する。
索引用語 門脈血栓, 回盲部憩室