セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専41:

VCM注腸が著効した重症偽膜性腸炎の一例

演者 桑野 哲史(独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター消化器・肝臓内科)
共同演者 松井 謙明(独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター消化器・肝臓内科), 中舎 晃男(独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター消化器・肝臓内科), 高松 悠 (独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター消化器・肝臓内科), 田代 茂樹(独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター消化器・肝臓内科), 清水 聡孝(独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター消化器・肝臓内科), 澤村 紀子(独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター消化器・肝臓内科), 多田 靖哉(独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター消化器・肝臓内科), 大越 大越恵一郎(独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター消化器・肝臓内科), 田中 宗浩(独立行政法人 国立病院機構 福岡東医療センター消化器・肝臓内科)
抄録 【症例】84歳、男性。近医で5年前より気管支喘息加療中。直近半年以内には抗生剤治療歴なし。来院1週間前より水様性下痢、食思不振を認め近医を受診。止痢薬処方されたが改善せず、体動困難となったため当院へ救急搬送、入院となった。入院時は経口摂取困難であり、体温は37.5℃であったが、血液検査でWBC16500/μl、CRP9.65mg/dlと炎症所見を認め、細菌性腸炎を疑った。高齢で、全身状態不良のため、LVFX(クラビット)500mgX1点滴治療を加療した。しかし、補液後も状態改善なく、第2病日の便検査でClostridium difficile抗原陽性であり第3病日に施行したS状結腸内視鏡検査でも直腸からS状結腸にかけて全周性、びまん性に偽膜の付着を認め、偽膜腸炎の診断となった。同日の腹部CTでは全結腸の腸管壁肥厚と腹水貯留を認めた。LVFX投与を中止しVCM(バンコマイシン)500mgx4回内服を開始するも水様便に改善なく、炎症所見、低アルブミン血症、腹水症が増悪し、全身状態も悪化した。University of Pittsburgh Medical Centerによる重症度分類では重症の診断であり、手術治療も検討されたが、全身状態不良のため手術適応とはならなかった。第9病日よりVCM内服に加え、metronidazole(MNZ)500mgx3回内服開始、第10病日に再度下部消化管内視鏡を施行したところ、偽膜は若干減少傾向にあったが依然残存し全身状態不良のままであった。第11病日より、内服に加えてVCM1g注腸を開始したところ、第15病日より徐々に水様便は改善し、それとともに全身状態も改善、第17病日にはClostridium difficile抗原の陰性化を確認した。第22病日の血液検査ではWBC4100/μl、CRP 0.36mg/dlと炎症所見は改善し、第23病日の下部消化管内視鏡でも偽膜の消失を確認した。偽膜性腸炎は抗生剤起因性腸炎の代表的な疾患であり、原因薬剤の中止とVCMあるいはMNZ内服が第一選択であるが、重症例に対しては手術治療も検討される。VCMの経腸投与は、経口摂取困難例やイレウスの症例において用いられることがあるが、今回我々は、VCM 内服が奏功せず、VCM注腸療法が著効した重症型偽膜性腸炎を経験したので報告する。
索引用語 偽膜性腸炎, VCM注腸