セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研03:

肝切除後も凝固線溶系の異常が遷延し肺塞栓を生じた巨大肝血管腫の1例

演者 熊野 仁美(国立病院機構 九州医療センター 肝胆膵外科)
共同演者 高見 裕子(国立病院機構 九州医療センター 肝胆膵外科), 立石 昌樹(国立病院機構 九州医療センター 肝胆膵外科), 龍 知記(国立病院機構 九州医療センター 肝胆膵外科), 和田 幸之(国立病院機構 九州医療センター 肝胆膵外科), 才津 秀樹(国立病院機構 九州医療センター 肝胆膵外科)
抄録  今回我々は、出血傾向は呈さなかったものの、切除後に凝固線溶系異常が遷延し肺塞栓が合併した巨大肝血管腫を経験したので報告する。 【症例】74才、女性。【主訴】腹部膨満感、通過障害。【現病歴】20年前検診で肝右葉に肝血管腫を指摘され、その後、定期的に経過観察されていた。平成23年5月頃から腹部膨満感と通過障害が出現し、翌24年3月に当科にコンサルトされた。腹部症状が強く、また凝固線溶系の軽度亢進を認めることから手術適応と判断し、治療目的に入院となった。 【血液検査成績】入院時、紫斑等の出血傾向は認めず、血小板14.6万/μl、プロトロンビン(PT)-INR1.06、フィブリノーゲン(FIB)261mg/dl。FDP-T57.2μg/ml、DDダイマー15.2μg/mlとDICまでには至ってはいないものの、軽度線溶系の亢進を認めた。【腹部CT】18×13×11cmの肝血管腫は肝右葉をほぼ占拠し、左縁が中肝静脈に接していた。その造影効果は腫瘍辺縁から次第に内部に及ぶという典型的な海綿状血管腫像を呈した。また、残存する非腫瘍部肝は著明に代償性に肥大しており、下縁は骨盤腔まで達していた。手術は拡大肝右葉切除術・胆嚢摘出術を施行した。出血量555g、切除肝重量1130g。病理組織検査は悪性所見なく、Cavernous hemangiomaの診断。【術後経過】術後全身状態には問題なく、翌日からの早期離床も可能であった。術後3日目、血小板が9.3万/μlと若干低下し、またFIB 402mg/dlと高値を示した。また術後徐々に上昇したFDP-T、DDダイマーは術後7日目、FDP-T386.7μg/ml、DDダイマー84.6μg/mlと最高値を示した。特に呼吸苦などの自覚症状は認めないものの、肺塞栓を疑い胸部CTを撮影したところ、肺動脈右中葉枝に塞栓を認め、また下肢静脈エコーにて腓腹静脈、ひらめ静脈、後頸骨静脈内に血栓を認めたため、肺塞栓症・深部静脈血栓症と診断し、抗凝固療法(フォンダパリヌクス、ワーファリン)を開始した。PT-INRが2に達したところで、ワーファリン単独とし、外来経過観察可能と判断して術後16日目に退院した。
索引用語 肝巨大血管腫, 凝固線溶系異常