セッション情報 一般演題

タイトル 030:

多発筋肉転移をきたした肝細胞癌の1例

演者 龍 知記(九州医療センター 肝胆膵外科)
共同演者 高見 裕子(九州医療センター 肝胆膵外科), 立石 昌樹(九州医療センター 肝胆膵外科), 和田 幸之(九州医療センター 肝胆膵外科), 才津 秀樹(九州医療センター 肝胆膵外科)
抄録 【はじめに】今回われわれは全身に多発する筋肉転移をきたし、短期間に急速に進行した肝細胞癌(以下HCC)の1例を経験したので報告する。【症例】76歳の男性で,右大腿の腫脹を主訴に近医を受診し、右大腿部腫瘍および肝腫瘍を指摘され精査加療目的に当科紹介となった。腹部造影MRIにて肝右葉に最大径がそれぞれ約7cm, 6cm, 3cmのhigh-low patternを呈する腫瘤を認め、肝両葉に約1cm大の結節を多数認めた。また左傍脊柱筋内に1cm大の増強結節を認め、大腿MRIにて両側大腿部筋層内に充実性の造影効果を有する腫瘤を認めた。肺転移、骨転移は認めなかった。HBs-Ag(-), HCV-Ab(+),腫瘍マーカーはAFP:763ng/ml, L3分画:26.4%, PIVKA-II:28000mAu/mlであった。以上より左傍脊柱筋転移、両側大腿筋転移を有する多発進行肝細胞癌(以下HCC)と診断し、肝内病変に対してはTACE、肝外転移に対してはSorafenib 400mgを用いて治療を開始した。シスプラチンを用いた2回のTACEにより肝病変の造影効果は消失し、ある程度の病勢制御を得ることができたものの、肝外病変の進行が顕著であった。治療開始から2ヶ月半後の造影CTにて右前胸壁、左腋窩、腹直筋、骨盤筋に新たに造影効果を有する腫瘤を認め、左傍脊柱筋転移、両側大腿筋転移はいずれも著明に増大傾向にあった。確定診断目的に右前胸壁部の約2cmの筋層内腫瘤を生検したところsarcomatoid HCCとの診断であった。全身骨格筋転移は制御不能でありその後も増大・増加傾向を認め、治療開始より約4ヶ月後に永眠された。【結語】HCCの遠隔転移は肺、骨、副腎、脳、皮膚などにみられるが、本症例のような骨格筋への血行性転移は極めてまれな症例と考えられる。またHCCに限らず癌の骨格筋への血行性転移は非常にまれである。若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝細胞癌, 筋肉転移