セッション情報 シンポジウム「消化器疾患における新規治療法」

タイトル S2-08:

食道アカラシアに対する新しい治療法「経口内視鏡的筋層切開術(POEM)」~当科にて施行した6例の成績~

演者 小川 竜(大分大学医学部附属病院消化器内科)
共同演者 村上 和成(大分大学医学部附属病院消化器内科), 安部 高志(大分県厚生連鶴見病院), 山内 美佳(大分大学医学部附属病院消化器内科), 松成 修(大分大学医学部附属病院消化器内科), 綿田 雅秀(大分大学医学部附属病院消化器内科), 中川 善文(大分大学医学部附属病院消化器内科), 水上 一弘(大分大学医学部附属病院消化器内科), 沖本 忠義(大分大学医学部附属病院消化器内科), 兒玉 雅明(大分大学医学部附属病院消化器内科), 藤岡 利生(大分大学医学部附属病院消化器内科)
抄録 【はじめに】食道アカラシアに対する治療として、バルーン拡張術がしばしば第一選択の治療法として行われている。また根治術として、これまでは腹腔鏡下Heller-Dor法が中心に行われてきた。2008年に井上らが経口内視鏡的筋層切開術(POEM:Per-Oral Endoscopic Myotomy)を報告して以降、その有用性から各施設でPOEMが積極的に行われてきている。当科では2010年11月にPOEMを導入し、これまで6例に対して施行し、良好な治療成績を得ているので報告する。【目的】POEMの有効性、合併症を検討した。【対象と方法】2010年10月から2012年3月までの間に、当科にてPOEMを施行した6例を対象とした。対象はすべて食道アカラシア患者であった。男女比は(男性)2:(女性)4、平均年齢45.2歳(28-58歳)、平均病悩期間17.2ヶ月(3-36ヶ月)であった。拡張gradeは1度1例,2度4例、3度1例、拡張型は紡錐型3例、フラスコ型1例、S字状型2例であった。【結果】奏功率(Eckardt score≦3を奏功とした)は100%(6例/6例)であり、Eckardt scoreは、術前平均 7.8から1.8へと有意差を持って改善を認めた(P<0.01)。POEM前平均静止LES圧は44.5mmHg(32-50mmHg)、POEM後平均静止LES圧は15.6mmHg(8-22mmHg)と有意差を持って改善を認めた(P<0.01)。周術期における偶発症としては、術中気腹を3例、術中高CO2血症・アシドーシスを2例、術中皮下気腫を3例、術中手技に伴う食道粘膜側損傷を1例、術中手技に伴う胃粘膜側損傷を1例、誤嚥性肺炎を1例に認めたが、いずれの症例も術後速やかに病態の改善を認めた。術後は、PPI内服にても有症状の逆流性食道炎1例のみに認めた。【結語】食道アカラシアに対するPOEMを6例経験した。周術期における合併症を認めたが速やかに改善し、また術後の逆流性食道炎も軽度であった。治療成績はきわめて良好で、高い満足度を得た。今後症例を増やし、更なる検討が必要であるが、POEMは食道アカラシアに対する安全・低侵襲かつ有用な治療法と考える。
索引用語 アカラシア, POEM