セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研72:

重症偽膜性腸炎に対し大腸内視鏡下直接バンコマイシン散布が有効であった一例

演者 平岡 裕樹(公立八女総合病院内科)
共同演者 城野 智毅(公立八女総合病院内科), 永松 洋明(公立八女総合病院内科), 堤 翼(公立八女総合病院内科), 丸岡 浩人(公立八女総合病院内科), 平井 真吾(公立八女総合病院内科), 徳安 秀紀(公立八女総合病院内科), 吉田 博(公立八女総合病院内科), 佐田 通夫(久留米大学消化器内科)
抄録 【はじめに】本邦では偽膜性腸炎に対する標準治療はバンコマイシン(VCM)の内服である。経口困難時は胃管チューブや注腸によるVCMの投与となっている。今回我々は重症偽膜性腸炎に対し、大腸内視鏡下にVCM散布を行い、重症偽膜性腸炎治癒症例を経験したので報告する。【症例】80歳、女性。うっ血性心不全に対して近医に入院加療中であった。2011年8月、2週間程の下痢を認めFOM:2g/dayの投与を行われたが、炎症所見の上昇 ( WBC 18700/μL、CRP 17.4 mg/dL )、および腹痛の増強を認めたため2011年8月17日当院に救急搬送となった。大腸内視鏡で偽膜を認め、便中一般細菌検査でClostridium difficileが陽性であったため偽膜性腸炎と診断され、絶食と補液、VCM 2g/day内服を開始した。しかし、炎症反応の上昇(WBC 27400/μL、CRP 21.9mg/dL )と症状の増悪を認めたためγ-グロブリン製剤の併用を行った。炎症所見の改善はみられず、腹部レントゲンでは中毒性巨大結腸症を認めたため、8月25日よりメトロニダゾール(1000mg/day)の併用を開始した。VCMとメトロニダゾール併用療法にて若干の改善を認め、9月5日大腸内視鏡を施行したが偽膜の残存を認め、VCMの注腸投与に変更した。4日間のVCM注腸療法を行い、炎症所見の改善傾向は認めたが、S状結腸には偽膜の残存を認めた。そのため大腸内視鏡下でのVCM1g/day散布を5日間施行した。効果判定の大腸内視鏡では、偽膜は消失し、粘膜の浮腫状変化と中毒性巨大結腸症の改善を認めた。以後、症状の再燃はなく経過した。【まとめ】本症例ではVCM内服や注腸、メトロニダゾール1併用を行うも、偽膜の消失は得られず、大腸内視鏡下で直接VCM散布を行ったことで速やかな偽膜の消失、症状の改善が得られた。VCMは内服投与では結腸到達時に十分な濃度が得られない可能性があり、注腸投与では目標部へ確実に到達しない可能性もある。大腸内視鏡下に病変部へ直接散布することは、高濃度のVCMを確実に病変部へ投与することが可能であり、難治性の偽膜性腸炎に対して有効な方法であると考えられた。
索引用語 偽膜性腸炎, 大腸内視鏡下散布