セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研71:

C7-HRP陰性消化管打ち抜き様潰瘍にガンシクロビルが著効した3例

演者 二見 崇太郎(佐賀県立病院好生館消化器内科)
共同演者 冨永 直之(佐賀県立病院好生館消化器内科), 田中 雄一郎(佐賀県立病院好生館消化器内科), 渡邊 聡(佐賀県立病院好生館消化器内科), 緒方 伸一(佐賀県立病院好生館消化器内科), 梶原 哲郎(佐賀県立病院好生館放射線科)
抄録 消化管はサイトメガロウイルス(CMV)感染症発現の好発部位であり、食道から大腸に至る全消化管に潰瘍性病変を形成し得る。確定診断にはCMV抗原検査(C7-HRPやC10/C11法)や生検が必要である。今回C7-HRPや生検は陰性ではあったが、内視鏡所見からCMV感染症を疑い、ガンシクロビル(GCV)を投与した結果、治癒し得た3症例を報告する。1例目は、敗血症、血管内播種性凝固、急性呼吸促迫症候群を発症した末期腎不全の64歳男性である。種々の加療により全身状態は改善したが、下行結腸~S状結腸に多発深掘れ不整形潰瘍を形成しており、諸検査は陰性ではあったが、内視鏡所見からCMV潰瘍を疑い、GCVを2週間投与して改善を得た。2例目は、糖尿病、閉塞性動脈硬化症に伴う難治性下腿潰瘍を有する74歳男性である。経過中に消化管出血あり、内視鏡検査を施行した。類円形の多発打ち抜き潰瘍を胃・大腸に認め、免疫抑制状態ではなく、諸検査は陰性ではあったが、内視鏡所見からCMV潰瘍を強く疑い、GCVを2週間投与したところ、潰瘍は著明に改善した。3例目は、潰瘍性大腸炎の41歳女性である。5-ASA、AZAにて維持療法を行っていたが増悪あり、5-ASA、AZA増量するも効果なく、諸検査は陰性ではあったが、内視鏡所見からCMV潰瘍を疑い、ステロイド使用前にGCV投与を試みたところ、潰瘍は著明に改善した。造血幹細胞移植後のCMV腸炎19例に対してC7-HRPやPCR法の陽性率を検討したMoriらの報告によれば、発症時においてもC7-HRP:10/19(47%)、PCR法:14/19(74%)と、CMV腸炎において陽性率は必ずしも高いとは言えない結果である。しかもPCR法に至っては国内では保険適応外であり、施行するか否かは十分な検討が必要である。CMV腸炎は諸検査にて必ずしも証明されるわけではなく、免疫抑制状態や全身状態が不良な症例で、内視鏡所見で強くCMV感染が疑われる場合には、診断的治療としてGCVを投与するのも有効な手段と考えた。
索引用語 サイトメガロウイルス, C7-HRP