セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研74:

急性膵炎を合併したクローン病の1例~両者の因果関係に対する考察~

演者 島崎 綾子(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 卜部 繁俊(長崎大学病院消化器内科), 赤澤 祐子(長崎大学病院消化器内科), 東郷 政明(長崎大学病院消化器内科), 福田 浩子(長崎大学病院消化器内科), 庄司 寛之(長崎大学病院消化器内科), 橋口 慶一(長崎大学病院消化器内科), 松島 加代子(長崎大学病院消化器内科), 南 ひとみ(長崎大学病院消化器内科), 塩澤 健(長崎大学病院消化器内科), 山口 直之(長崎大学病院消化器内科), 大仁田 賢(長崎大学病院消化器内科), 磯本 一(長崎大学病院消化器内科), 竹島 史直(長崎大学病院消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 症例は50歳男性。1978年に嘔吐、激烈な腹痛、蠕動不穏を認め、近医受診後、当院紹介受診。クローン病の診断で緊急手術となった後、外来でfollowされていたが、その後も狭窄解除目的で小腸・大腸切除術やストーマ造設術など計4数回の手術を受けた。直近の外来ではエレンタール6P/day服用、レミケード5mg/kg8週おき投与中であり、CDAI値は140程度であったがレミケード前は閉鎖肛門部から血性分泌物排出が出現するなど状態はやや不良であった。2012年6月末頃より嘔気出現・持続し、7月6日頃よりエレンタールも服用困難な状態となり、7月9日未明、近医救急外来を受診。重症度軽症の膵炎と診断され、保存的加療を開始され、7月10日当科へ転院となり、保存的加療継続で膵炎は軽快した。クローン病経過中に併発した膵炎の報告例はいくつか散見されるが、原因として、薬剤性、自己免疫性、ウイルス性などが挙げられている。クローン病そのものの病態も膵炎発症の機序に関わっていることが推測されているが、明確な因果関係は示されていない。膵炎発症機序として、十二指腸乳頭部病変、免疫異常(自己免疫性膵炎(AIP)も含めて)、薬剤(PSL,SASP,アザチオプリンなど)微小胆石の併発、微小循環障害、脱水、遺伝要因、腸内細菌による膵Trypsinogenの活性化、障害小腸粘膜からのAMY吸収亢進、病変部での腸管AMYの産生、栄養障害による膵の線維化などが考えられている。本症例では器質的な異常は指摘されておらず、CT・MRCP上、膵管の軽度拡張を認めるがAIPに特徴的な画像変化やIgG4上昇も無く、抗核抗体やリウマチ因子の上昇も見られなかった。膵炎改善後、エレンタールを再開し、外来での経過からレミケードの倍量投与(10mg/kg)を行い、クローン病の病勢が安定したことを確認の上退院とし、現在外来フォロー中であるが、今後膵炎の原因検索としてERCPや膵EUS-FNAなどの施行を協議検討していく方針である。今後も厳重な経過観察と、同様の症例の集積と検討が望まれる。
索引用語 クローン病, 膵炎