セッション情報 シンポジウム「消化器疾患における新規治療法」

タイトル S2-09:

食道アカラシアに対する新たな低侵襲内視鏡的治療―POEM―

演者 南 ひとみ(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 磯本 一(長崎大学病院消化器内科), 山口 直之(長崎大学病院消化器内科), 松島 加代子(長崎大学病院消化器内科), 赤澤 祐子(長崎大学病院消化器内科), 大仁田 賢(長崎大学病院消化器内科), 竹島 史直(長崎大学病院消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 はじめに 食道アカラシアは、下部食道括約筋の弛緩不全による食事の通過障害を主訴とする食道機能性疾患である。病因や病態については不明な点が多く、症状に応じたバルーン拡張や外科的筋層切開が行われてきた。根治術としては、1913年の初回報告以来Hellerの筋層切開が行われてきたが、2007年、Pasrichaらによって報告された動物モデルでの内視鏡的筋層切開を受けて、2008年井上らが初の内視鏡的食道筋層切開術(Per-Oral Endoscopic Myotomy; POEM)を行いその後も報告してきた。当院では、昭和大学の協力を得て、国内2施設目として2010年8月より同術式を導入し、2012年8月までに27症例において良好な成績を得たので、その経過を報告したい。対象と方法 症例はHeller-Dor術後症例1例を含む19~84歳の(平均55.5歳)の有症状食道アカラシアおよびびまん性食道痙攣(男女比 7:19)。全身麻酔下に経口内視鏡を挿入し、筋層切開開始部の約1cm口側に縦方向約15mmの粘膜切開をおく。同部をentryとし、食道胃接合部を3cm通り過ぎる粘膜下層トンネルを作成する。トンネル内で胃側約2cmを含む筋層切開を行い、食道真腔側より通過の改善を確認した後に、クリップを用いて、entryの閉鎖を行う。切開時のデバイスはsmall triangle tip knife(プロトタイプ、Olympus)、高周波発生装置はVIO300dのSpray Coagモードを用いた。結果と考察 全症例において、穿孔や縦隔炎などの重篤な合併症を認めなかった。平均手術時間は102.2分間、術後在院日数は平均6.5日間であった。平均筋層切開長は14.5cmで、術前後で食道造影、内視鏡所見および自覚症状スコア(Ekcardt score 6.8→0.9)、LES圧(78.2→22.3mmHg)は有意に改善した。2例(10日目、2日目)に出血を認めたが、いずれも保存的に軽快した。結論POEMは食道アカラシアおよび類縁食道運動機能性疾患に対する低侵襲括効果的な新たな治療法であり、今後標準術式となり得る。
索引用語 食道アカラシア, POEM