セッション情報 一般演題

タイトル 052:

異物穿通に起因する肛門周囲膿瘍の5例

演者 深見 賢作(大腸肛門病センター 高野病院)
共同演者 辻 順行(大腸肛門病センター 高野病院), 久野 三朗(大腸肛門病センター 高野病院), 村田 隆二(大腸肛門病センター 高野病院), 中村 寧(大腸肛門病センター 高野病院), 入江 朋子(大腸肛門病センター 高野病院), 田中 正文(大腸肛門病センター 高野病院), 福永 光子(大腸肛門病センター 高野病院), 野口 忠昭(大腸肛門病センター 高野病院), 佐藤 太一(大腸肛門病センター 高野病院), 佐伯 泰愼(大腸肛門病センター 高野病院), 緒方 俊二(大腸肛門病センター 高野病院), 山田 一隆(大腸肛門病センター 高野病院), 高野 正博(大腸肛門病センター 高野病院)
抄録 肛囲膿瘍の大部分は肛門陰窩に開口する肛門腺の感染によるが、基本的には肛門に傷があれば肛囲膿瘍は発症する可能性がある。今回発症原因として稀とされる異物穿通に起因する肛囲膿瘍を経験したので報告する。2005年1月から2012年7月までに当院で手術を行った肛囲膿瘍あるいは痔瘻の初発症例は2574例で、そのうちの5例(0.2%)が異物穿通による肛囲膿瘍症例であった。年齢中央値は63歳(50歳~74歳)、男女比4:1、全例が肛門痛を主訴に来院していた。既往歴は1例のみ胃切除があった。自覚症状の出現から初診までの日数の中央値は5日(2日~64日)であった。肛囲膿瘍の程度は内外括約筋間膿瘍1例、坐骨直腸窩膿瘍4例で、深部膿瘍が多かった。異物の種類は魚骨が4例、竹串が1例であった。それぞれの内訳に関しては、魚骨例の1例、2例目は初診時に魚骨の肛門への穿通を認めたため除去された例で、初診時に膿瘍形成がなかったため抗生剤で経過観察となったが、3あるいは4日後に膿瘍を形成した症例であった。魚骨例の3例目は切開排膿時に魚骨が確認され、魚骨例の4例目は切開排膿後の痔瘻根治術施行時に魚骨が確認された症例であった。また竹串の1例は、初回手術で痔瘻根治術が施行されたが治癒せず、痔瘻再発の診断で再手術した際に竹串の迷入が確認された例であった。術前検査は5例全例に肛門エコーが行われたほか、1例にのみMRIが行われていた。初診時に魚骨を除去した2例を除けば3例ともに術前に異物の存在を同定されておらず、retrospectiveな検討では1例が同定可能、2例が同定困難と考えられた。初回手術から治癒確認までの日数の中央値は149日(65日~401日)であり、手術により全例が治癒した。(結語)肛囲膿瘍の原因にはいろいろあるが、異物が原因になりうることも念頭に入れて診断に臨むべきであると思われた。
索引用語 肛門周囲膿瘍, 異物