セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専38:

汎血球減少をきたし、多彩な経過をたどったクローン病の1例

演者 竹田 幸子(宮崎大学・消化器血液学)
共同演者 山本 章二朗(宮崎大学・消化器血液学), 平田 晶子(宮崎大学・消化器血液学), 上原 なつみ(宮崎大学・消化器血液学), 鈴木 翔(宮崎大学・消化器血液学), 日高 舞(宮崎大学・消化器血液学), 夏田 朱一郎(宮崎大学・消化器血液学), 橋本 神奈(宮崎大学・消化器血液学), 山路 卓巳(宮崎大学・消化器血液学), 永山 学(宮崎大学・消化器血液学), 安倍 弘生(宮崎大学・消化器血液学), 三池 忠(宮崎大学・消化器血液学), 岩切 久芳(宮崎大学・消化器血液学), 田原 良博(宮崎大学・消化器血液学), 蓮池 悟(宮崎大学・消化器血液学), 永田 賢治(宮崎大学・消化器血液学), 佛坂 正幸(潤和会記念病院・外科), 下田 和哉(宮崎大学・消化器血液学)
抄録 症例は30歳代、女性。200X年にクローン病(小腸大腸型)と診断し、メサラジンとエレンタール配合内用剤で加療していた。200X+1年1月頃より再燃し、インフリキシマブ(IFX)を開始した。IFX3回投与後の大腸内視鏡検査(CS)で、縦走潰瘍が残存していたため、同年5月下旬よりアザチオプリン(AZA)25mg/日を開始し、8日後に50mg/日へ増量した。AZA開始約2週間後より倦怠感、発熱、肛門痛、脱毛が出現し、その後に汎血球減少(白血球500/μL、好中球15/μL、血小板11.9万/μL、ヘモグロビン(Hb)9.1g/dL)を認め、入院となった。入院時、37.9℃の発熱、骨髄穿刺で有核細胞数の減少、骨髄生検で造血細胞の減少を認めた。発熱性好中球減少症と診断し、G-CSF製剤や抗菌薬を開始した。汎血球減少の原因として薬剤性を考え、投与中の薬剤全てを中止した。入院時に肛門周囲膿瘍も認め、切開したが、同部からの排膿はなかった。その後徐々に臀部に膿瘍が拡大したため、再切開で排膿を認め、ドレーンを挿入した。膿培養でE. raffinosusが検出され、抗菌薬で加療した。経過中、血液培養と便培養からS. mercescensが検出された。また肺野に結節影、肝内に多発性の腫瘤が出現するなど多彩な経過をたどった。好中球0/μL、血小板2.7万/μL、Hb 4.7g/dLまで低下したが、G-CSFを600μg/日に増量し、汎血球減少は徐々に改善し、抗菌薬投与などにて発熱、肛門周囲膿瘍、肺腫瘤、肝腫瘤はいずれも改善傾向を示した。肺腫瘤、肝腫瘤はいずれも感染性と考えた。クローン病に対しては、絶食のみで病状は落ち着いており、入院約70日目のCSでも潰瘍は縮小化していた。全身状態が改善したため、経腸栄養、その後食事摂取を再開し、エレンタール配合内用剤で加療中であるが、クローン病の再燃は認めていない。なお、DLSTは陰性であったが、経過より汎血球減少の原因としてAZAの可能性が高いと考えた。汎血球減少をきたし、多彩な経過をたどったクローン病の症例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 クローン病, 汎血球減少症