セッション情報 一般演題

タイトル 106:

生体肝移植術後に生じた肝動脈仮性動脈瘤が自然消失した稀な一例

演者 中川原 英和(九州大学大学院 消化器・総合外科)
共同演者 調 憲(九州大学大学院 消化器・総合外科), 戸島 剛男(九州大学大学院 消化器・総合外科), 松本 圭大(九州大学大学院 消化器・総合外科), 吉屋 匠平(九州大学大学院 消化器・総合外科), 的野 る美(九州大学大学院 消化器・総合外科), 播本 憲史(九州大学大学院 消化器・総合外科), 山下 洋市(九州大学大学院 消化器・総合外科), 池上 徹(九州大学大学院 消化器・総合外科), 吉住 朋晴(九州大学大学院 消化器・総合外科), 副島 雄二(九州大学大学院 消化器・総合外科), 池田 哲夫(九州大学大学院 消化器・総合外科), 前原 喜彦(九州大学大学院 消化器・総合外科)
抄録 【背景】生体肝移植後の肝動脈・仮性動脈瘤の発生は極めて稀である。さらに、その自然消失に関する報告は殆どない。我々は生体肝移植後に生じた肝動脈の仮性動脈瘤が自然消失した症例を経験したので報告する。【症例】54歳、女性。原発性胆汁性肝硬変に対して夫をドナーとする生体肝移植術(左葉グラフト)を施行した。血液型不適合肝移植であり、術前リツキシマブの投与および血漿交換を行った。動脈吻合はグラフトA2/3を左肝動脈に、グラフトA4を右肝動脈に顕微鏡下に結節縫合による端々吻合し、術後の血流は良好であった。術後グラフト肝機能は良好に推移し、液性反応を含む拒絶反応を示唆するような所見は認めなかった。術後1週間目の造影CTにて肝動脈に著変を認めなかったが、移植時の摘脾に起因すると考えられる脾静脈から本幹へのびる門脈血栓を認めたため、抗凝固を行う方針とした。抗凝固は全身ヘパリン化からワーファリン2mg/日の内服にてPT-INRを1.5~2.0でコントロールを行った。術後2週間目のCTにて、3mm大の紡錘状仮性動脈瘤の形成を動脈吻合部より中枢側に認め、術後1ヶ月、2ヶ月には仮性動脈瘤は7mm大の球状としだいに増大した。そのため肝動脈切除再建術の適応と考え術前準備としてワーファリンを中止した。すると、手術目的に入院時の造影CTにて肝動脈瘤は全く描出されず、自然消失したと判断された。【まとめ】生体肝移植後に生じた肝動脈・仮性動脈瘤が自然消失した極めて稀な症例を経験した。動脈瘤の形成、成長から消失までの経過をCT画像と共に文献的考察を交え報告する。術後の門脈血栓に対する抗凝固療法が動脈瘤発生の一因と考えられ、初期治療としての抗凝固療法の中止およびCT画像によるフォローが重要と考えられた。
索引用語 仮性動脈瘤, 移植後