抄録 |
Peutz-Jeghers症候群は消化管ポリポーシスと口唇・口腔粘膜・指趾に多発する特有な色素班を伴う常染色体優性遺伝性疾患で,腸重積や悪性腫瘍を合併することが知られている.今回,我々は,腸重積を合併したPeutz-Jeghers症候群の1症例を経験したので報告する.症例は16歳女性.平成23年5月下旬腹痛を主訴に当院消化器内科初診.既往歴は特記すべき事項なし.家族歴は父親がPeutz-Jeghers症候群による結腸癌で死亡.現症として口唇・口腔粘膜・手足に黒色色素班を認めPeutz-Jeghers症候群の診断で,消化管精査の予定であった.同年6月上旬,夜間に腹痛を認め当院救急外来受診.腹部CT検査では,小腸の一部内腔に腸間膜の脂肪と血管が入り込んでおり,小腸重積と診断.さらに,重積した小腸に一部造影効果不良な領域がみられ虚血に陥っていたため同日緊急手術を行った.腹腔鏡下観察にて著明に拡張した重積小腸を認めた.重積腸管に明らかな壊死はなかったが,径3~4cmのポリープを認め,腸重積の原因と考え,同部を切除した.ポリープの病理組織学的検査でPeutz-Jeghers型と診断された.術後経過は良好で手術後8日目に退院となる.Peutz-Jeghers症候群のポリープは過誤腫であり,悪性化しないといわれていたが,近年ポリープの中に腺腫や癌の存在が報告されるようになってきている.本症例では径3~4cm程度とかなり大きかったことから腸重積の原因となるだけでなく,悪性化の可能性もあったと考えられる.さらにPeutz-Jeghers症候群では消化管以外にも腫瘍性病変が合併しやすいことから本症例でも今後も定期的な消化管の精査ならびに他臓器癌の合併に関して十分な経過観察が必要である. |