セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研87:

腹腔鏡下に修復しえたS状結腸間膜窩ヘルニアの1例

演者 串間 美幸(潤和会記念病院 外科DELIMITER宮崎大学医学部付属病院 卒後臨床研修センター)
共同演者 岩村 威志(潤和会記念病院 外科), 黒木 直哉(潤和会記念病院 外科), 佛坂 正幸(潤和会記念病院 外科), 樋口 茂輝(潤和会記念病院 外科), 根本 学(潤和会記念病院 外科)
抄録 腹腔鏡下に修復しえたS状結腸間膜窩ヘルニアの1例症例は49歳の男性で、突然の下腹部痛と嘔吐、間欠的な腹痛を主訴に紹介元を受診し、イレウスの診断で当院に入院となった。開腹手術歴はなく、身体所見では下腹部全体の自発痛・圧痛を認めたが筋性防御は認めなかった。また、腸蠕動音は亢進していた。血液検査では、白血球が高値であったがCRPは正常範囲内で炎症反応は認めなかった。臥位で撮影した腹部レントゲンで拡張した腸管と小腸ガス、腹部CTで下腹部中心に拡張した小腸と左下腹部にループ状・8の字状の腸管、腸間膜内血管の集簇像を認めた。S状結腸間膜窩ヘルニアの可能性が示唆され、絞扼を疑い発症から24時間で緊急に腹腔鏡下手術を行った。腹腔鏡下に観察すると、少量の腹水と拡張した腸管を認めた。S状結腸間膜が背側より腸管にて押し上げられていた。S状結腸間膜付着部を観察すると、S状結腸間膜付着部と間膜の間隙に小腸が陥入し内ヘルニア状態であった。陥入した腸管を鉗子で愛護的に扱い整復を行った。腸管の漿膜はやや赤みを帯びていたが虚血は認められなかったため、腸切除は行わずヘルニア門を縫合閉鎖し、完全腹腔鏡下に手術を終了した。経過は良好で、術後10日目に退院となった。イレウスの原因として内ヘルニアの頻度はイレウス全体の約1~4%、さらにS状結腸間膜に関連するものは内ヘルニア全体の3~5%と比較的稀である。S状結腸間膜関連ヘルニアで最も頻度が多いのは、S状結腸間膜左葉の欠損部に腸管が陥入するS状結腸間膜内ヘルニア(38%)であり、S状結腸間膜付着部の陥凹部に腸管が陥入するS状結腸間膜窩ヘルニアは2番目に多い (34%)。S状結腸間膜窩ヘルニアの存在頻度は剖検例で50~75%とされており、発生は先天的であると言われている。また、S状結腸間膜窩の腹側はS状結腸間膜であるため、ヘルニアが発生することは少ない。本症例はS状結腸間膜窩に小腸が入り込みイレウス症状を呈した稀な疾患であった。特徴的なCT所見からS状結腸間膜窩ヘルニアを疑い、完全腹腔鏡下で治療しえた。若干の文献的考察を含めて報告する。
索引用語 S状結腸間膜窩ヘルニア, 腹腔鏡