セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研63:

LPZ中止後も下痢が遷延しcollagenous colitisが疑われた1例

演者 木下 慶亮(大分三愛メディカルセンタ- 消化器内科)
共同演者 那須 眞示(大分三愛メディカルセンタ- 消化器内科), 蒲池 綾子(大分医師会立アルメイダ病院 病理部)
抄録 【症例】84歳、女性。【現病歴】20X年8月に発作性心房細動に伴う心原性脳塞栓症を発症し脳外科病院に入院。Lansoprazole(LPZ)、ワーファリンなどの投薬が開始された。同年9月当院循環器科で経過観察となった。元々は便秘であったが、20X+1年3月から時々下痢が続いていた。その後施設入所となり、近医で同剤を継続服用中であった。下痢が徐々にひどくなり、5月下旬には血清 K1.46となり、輸液などを行いながら下痢止め・K製剤・スピロノラクトンを服用中であった。入院1週間前にH2RAに移行していたが、下痢が改善しないため6月下旬に当院紹介された。
【現症】血圧132/60、脈90整、腹部は平坦、軟で圧痛や腫瘤を認めず。【血液生化学検査】軽度の貧血、低蛋白血症、K2.0を認めた。【経過】紹介当日直腸から2個の生検を行ったが、collagen bandは確認されず、胸腹部CTにても下痢の原因を特定できなかった。十分な点滴とK製剤の点滴投与、ポリカルボフィル・乳酸菌製剤の内服投与を行なった。発熱や痛みもなく食欲があり、絶食とはしなかった。食欲はKの改善とともに増進していったが、全く下痢が止まるまでには至らなかった。臨牀経過よりcollagenous colitis (CC)はほぼ間違いないが、下痢が続くために、第9病日から5-ASA1600mg/日の投与を開始し、5日間で下痢は消失した。CCの確証や継続した治療の必要性を確認するため、状態が安定した7月上旬に2回目の再検をTCFで行った。上行、下行、S状結腸の一部に粘膜の浮腫状変化と顆粒状の粘膜を認めたが、縦走潰瘍や瘢痕は認めなかった。全身状態の十分な改善を認め、5-ASAを800mgとし施設に戻った。その後も下痢の再燃はなく、便秘状態となり8月下旬から同剤を400mgに減量しているが悪化は認められていない。
【結論】CCは、病理所見によりcollagen bandを10μm以上認めることが条件となっているが、10μm以下であってもその臨床経過によってCCと判断すべき病態も少なくない。当院においてこの3年間に14例の確診例と本例を含めた2例の疑診例があり、その臨床病理学的背景も検討し報告する。
索引用語 collagenous colitis, 5-ASA