セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専71:

胃大網動脈解離、仮性動脈瘤破裂による腹腔内出血を来たした1例

演者 有馬 浩太(天草地域医療センター 外科)
共同演者 高城 克暢(天草地域医療センター 外科), 土井 康郎(天草地域医療センター 外科), 中浦 猛(天草地域医療センター 放射線科), 高田 登(天草地域医療センター 外科), 吉仲 一郎(天草地域医療センター 外科), 原田 和則(天草地域医療センター 外科)
抄録 【はじめに】腹部内臓動脈瘤は稀な疾患であり、とくに胃大網動脈に発生する動脈瘤は稀である。今回われわれは胃大網動脈に広範な解離、および仮性動脈瘤の破裂による腹腔内出血の1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。【症例】83歳男性。2012年7月下旬未明に腹痛、全身倦怠感を主訴に当院救急搬送となった。既往歴として慢性心房細動、慢性心不全に対し循環器内科にてワーファリン内服中であった。来院時vital signは著変を認めなかったが、心窩部に圧痛を認め、血液検査にてHb 5.9と著明な貧血、Cr 2.78、BUN 72.1と腎機能悪化、PT-INR 5.12と著明な延長を認めた。単純CTにて血性腹水を示唆する高CT値の多量の腹水を認めたが、明らかなfree airは認めなかった。腹腔内出血を疑って造影CTを施行したところ、胃大網動脈の拡張および同部からのextravasationを認めた。腹水もやや増加を認めたため、同日緊急にIVRを施行した。胃十二指腸動脈造影にて、胃大網動脈の不整な拡張を認め、一部に仮性動脈瘤形成およびextravasationを認めた。遠位側は盲端となっており、胃大網動脈の解離と判断した。拡張血管にコイル塞栓を施行し、拡張血管の血栓化を得た。術後経過は良好で、術後7日目に原疾患治療のため循環器内科へ転科となった。【考察】腹部内臓動脈瘤は稀な疾患であり、なかでも胃大網動脈瘤は0.4%とされている(3000 例以上の腹部内蔵動脈瘤について解析したStanleyらによる)。本疾患の発生機序としては動脈硬化、血管炎などが挙げられている。動脈瘤の破裂を起こせば致死率の高い疾患であり、治療は手術あるいは塞栓術が選択される。本症例において、循環動態は安定していたが患者の全身状態は比較的悪く、より低侵襲なIVRによる治療が望まれた。【まとめ】高CT値の腹水貯留を認めた場合は腹腔内出血を疑う必要があり、全身状態の比較的悪い患者でもIVR下のコイル塞栓術による止血が可能で、救命することができた。
索引用語 腹腔内出血, 胃大網動脈瘤