セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専85:

飲酒を契機にバルプロ酸による高NH3血症性脳症をきたした1例

演者 井戸 佑美(済生会熊本病院消化器病センター)
共同演者 糸島 尚(済生会熊本病院消化器病センター), 古賀 毅彦(済生会熊本病院消化器病センター), 竹口 真隆(済生会熊本病院消化器病センター), 吉松 亜希子(済生会熊本病院消化器病センター), 齋藤 宏和(済生会熊本病院消化器病センター), 鈴木 博子(済生会熊本病院消化器病センター), 藤山 俊一郎(済生会熊本病院消化器病センター), 門野 義弘(済生会熊本病院消化器病センター), 塩屋 公孝(済生会熊本病院消化器病センター), 浦田 淳資(済生会熊本病院消化器病センター), 近澤 秀人(済生会熊本病院消化器病センター), 多田 修治(済生会熊本病院消化器病センター), 今村 治男(済生会熊本病院消化器病センター)
抄録 症例は38歳女性。アルコール多飲歴あり。4年前からてんかんに対してバルプロ酸400mgを内服していた。1月12日から嘔吐が出現し、17日意識障害を来したため救急搬送になった。来院時、JCSII-10で痙攣を疑われジアゼパム・フェニトインを投与されたが症状の改善は見られなかった。血清NH3値379μg/dlであり高NH3血症による意識障害を疑われ当科入院となった。血液検査ではAST106IU/l、ALT88IU/l、γ-GTP524IU/lと肝胆道系酵素の上昇を認めたが、Alb4.3g/dl、T-Bil1.5mg/dl、PT72.8%と予備能の著明な低下は認めなかった。各種画像検査では肝の形態は正常で側副血行路も認めず、血中アミノ酸分析も正常であった。分岐鎖アミノ酸製剤の点滴注射で意識障害は速やかに改善を認め、20日には肝胆道系酵素は改善、血清NH3値も51μg/dlと低下していた。
前年11月のバルプロ酸血中濃度は22.7μg/mlであったが、来院時80.6μg/mlと上昇していた。てんかんの治療上内服が必要と判断し、同量を継続したが意識障害の再燃はなかった。1月20日自宅退院し、即飲酒を再開後、嘔気・嘔吐・見当識障害をきたしたため21日救急外来を受診した。血清NH3値489μg/dl、バルプロ酸血中濃度110μg/mlと高値であったため再入院となった。入院後バルプロ酸をフェニトインに変更し、症状改善したため退院となった。
初回入院後、断酒しバルプロ酸のみを継続したところ肝胆道系酵素と血清NH3値・バルプロ酸血中濃度の速やかな改善を認めた。そのため肝障害は飲酒によるものと考えられ、バルプロ酸の代謝遅延から血中濃度上昇と高NH3血症を呈したと考えられた。
バルプロ酸の副作用として高頻度に高NH3血症をきたすが、症状なく経過する例が多いとされている。今回我々はバルプロ酸内服中の患者に、飲酒を契機に高NH3血症性脳症をきたしたと考えられた1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
索引用語 バルプロ酸, 高NH3血症