セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専87:

好酸球増多症を契機に肝トキソカラ症の診断に至った一例

演者 岩田 真悠子(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科)
共同演者 福嶋 伸良(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 黒川 美穂(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 山口 恵梨子(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 加来 真理子(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 寺松  克人(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 中村 吏(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 柿ヶ尾 佳奈(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 岡本 梨沙(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 原口 知大(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 藤森 尚(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 隅田 頼信(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 國府島 庸之(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 吉本 剛志(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 河邊 顕(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 福泉 公仁隆(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 桃崎 征也(国立病院機構 九州医療センター 病理部), 原田 直彦(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 中牟田 誠(国立病院機構 九州医療センター 消化器内科), 丸山 治彦(宮崎大学医学部寄生虫学), 吉田 彩子(宮崎大学医学部寄生虫学)
抄録 症例は70歳男性、主訴は特になし。近医で胆嚢ポリープに対し経過観察中の採血で好酸球増多症を認め、当院血液内科紹介受診。CTにて肝内多発腫瘤を認め、精査目的で当科紹介された。肺結核、肋膜炎の既往あり。家族歴特記事項なし。ビール500ml/日の飲酒歴、20本/日の喫煙歴あり、養鶏を職業とし、1年半前までは時々鶏の生肝を食べていた。現症は、BT36.6℃、バイタル問題なし。心音整・雑音なし、呼吸音清・ラ音聴取せず。腹部平坦軟、圧痛(-)、肝脾触知せず。採血上、WBC15000/μl, Eosino63.5%と好酸球増多を認め、IgE1429 IU/ml, CRP0.31mg/dlであった。生化学検査ではLDH240 IU/l, ALP389 IU/lと軽度高値以外には特に異常所見は認めなかった。便中寄生虫卵は認めなかった。造影CTでは、low-iso patternを呈する10mm前後の境界不明瞭な腫瘍様所見を肝両葉に多数認めた。また胸部では、右下葉や左舌区末梢に5~10mm前後の多形状結節や小浸潤影を複数認めた。MRIでは、T1W1で周囲肝実質と同程度、T2W1にて淡い高信号、造影後期から平衡相にて低信号、肝細胞相にて低信号の小結節を多数認めた。鶏の生レバーを摂取した経緯と好酸球増多症・IgE上昇から寄生虫疾患が疑われたため、肝生検を施行し、併せて各種抗体等も検査した。肝生検では寄生虫の虫体は検出されなかったが、壊死を伴う好酸球性肉芽病変を多発性に認め、寄生虫疾患が最も疑われた。抗寄生虫抗体スクリーニング検査の結果、イヌ回虫が疑陽性、ブタ回虫が弱陽性であったため、宮崎大学医学部寄生虫学に精査以来した結果、イヌ回虫抗原に対するきわめて強い結合が認められ、肝トキソカラ症と診断された。現在はアルベンダゾール10-15mg/kg/day内服にて加療開始し、治療開始15日目の採血でWBC8800/μl, Eosino26.4%, IgE650 IU/mlと低下し改善傾向であった。今回、好酸球増多症を契機に肝トキソカラ症と診断し加療開始した一例を経験した。興味深い症例であり、考察を加えて報告する。
索引用語 好酸球増多症, 寄生虫疾患